巻ノ百三十六 堺の南でその十二
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「あれは」
「死んで首を取られて喉に飯があったり腹を切った時に腹から飯が出たりするのじゃ」
「そうしたことがあってですか」
「木村殿はその話を聞かれてな」
「食を節されて」
「それでじゃ」
そのうえでというのだ。
「死ぬ時を待たれておるのじゃ」
「そうだったのですか」
「そうじゃ、あの方も覚悟を決めておられる」
この度の戦で果敢に戦いそして死ぬことをというのだ。
「それでじゃ」
「あの様にですか」
「されておるのじゃ」
「そうでしたか」
「死ぬ為にな。しかし我等はな」
「生きる、ですな」
「真田の武士の道は死ぬものではない」
生きるもの、だからだというのだ。
「それでじゃ」
「何があろうとも」
「飯は食う」
「そして力をつけてですな」
「戦うのじゃ」
そうするというのだ。
「何があろうともな」
「わかり申した、ではそれがしも」
「飯はある」
兵糧には困っていない、豊臣家はその力を使い兵糧はしこたま入れておいたのだ。その為兵達が餓えることも起こっていない。むしろたらふく食っていた。
「ならばな」
「それで、ですな」
「たらふく食ってな」
「戦いまする」
「そうせよ、そして生きるのじゃ」
「何があろうとも」
「拙者もそうするしな」
幸村自身もというのだ。
「だからな」
「それがしもですか」
「生きよ、そして無論お主達もじゃ」
十勇士達に対しても言うのだった。
「皆生きよ、よいな」
「はい、それでは」
「これからの戦で何があろうともです」
「戦いそして」
「生き残ります」
「そのことを誓い合おうぞ。それでじゃが」
あらためて言う幸村だった。
「幸い飯だけでなく酒もある」
「ですが、今も尚」
「城には酒がふんだんにありますな」
「ではその酒も飲み」
「英気を養いますか」
「そうしようぞ、やはり酒はな」
これについては笑って話した幸村だった。
「何時でも飲みたいものじゃ」
「戦を前にしても」
「それでもですな」
「やはり飲みたくなりますな」
「どうしても」
「それでじゃ、今宵も皆で飲もうぞ」
こう言うのだった。
「塙殿の杯も出してな」
「ですな、あの方もお好きでしたし」
「あの方の冥福を祈ると共に」
「杯も出しましょうぞ」
「あの方の分のそれも」
「そうして共に飲もうぞ」
塙も入れてというのだ。
「そうしてじゃ、今宵も飲み」
「そして戦の為に英気を養い」
「そしてですな」
「そしてそのうえで」
「戦いましょうぞ」
「戦になれば」
十勇士達は早速だった、その酒に肴を出した。肴は大阪の海で獲れた新鮮な魚を刺身にしたものだった。
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