乙彼
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券っていっても現地で使うお金は必要だし、どうしたものかってな」
「なるほどなるほど。ズバリ、翔希さんと里香さんなら元手もなしにいい手がありますよ!」
「おお……!」
元手がいらない、というのは素晴らしい。とはいえ翔希たちならば、というのも少し気になって、学食から窓の外を見てみれば。相変わらずも仲むつまじく、明日奈の手料理を食している桐ヶ谷夫妻が、独特の雰囲気を発していて。翔希につられて窓の外を見た桂子も、一瞬だけ羨ましげな表情を見せたものの、翔希の言わんとしていることは伝わったらしい。
「キリトさんたちじゃダメですねー。翔希さんと里香さんじゃないと!」
「どういうことでしょう……」
「それはですね――」
キリトたちでは出来ないが自分たちでは出来る――とは、翔希にもさっぱり分からない。それはひよりも同様らしく、桂子は胸を張って、そのウルトラCを言ってのけて――
「――ショウキ? なによ、ボーッとしちゃって」
「あ、ああ……悪い」
イグドラシル・シティ、リズベット武具店。かの踊り子との騒動より以前のため、慣れ親しんだ店とアバターであり……それはとにかく。
店先を店員NPCに任せて、休憩用の長椅子でボーッとしていたショウキに対して、リズから鋭いツッコミついでにコーヒーが手渡される。そのままリズも自らのコーヒーを片手に座り、どことなくタイミングが揃って一口。
「いや、暇だなって」
「……まだオーディナル・スケール流行ってるものねぇ。そろそろストップするとは思うんだけど」
正直、口先からの出任せではあったものの、リズも苦笑しつつ納得してくれたようだ。確かにオーディナル・スケール、ないしARの流行によりまだVRはちょっとした冬の時代だったのは事実だったが、ショウキが考え込んでしまっているのはそんなことではない。客もいないリズベット武具店にて、まずは頼まれていたメンテナンスや武具の作製などを終わらせ、ゆっくりとコーヒーでも飲んでいたが、ショウキの脳内からはそのことが離れない。
『愛してる、って言うだけでいいんですよ!』
――シリカから自信満々にアドバイスされたのは、たったのその一言。いわく、普段からそんなことを言い合っていないカップルには効果てきめんですよ! ……などと、本人は誰と付き合っているわけではないだろうに、目を輝かせて言ってきていて。とはいえひよりからも里香さんは喜びそうですね、などと太鼓判を押してもらってはいるが。
問題は言うタイミングだ。そもそも言うようなタイミングが普段からあるらしい、例えば桐ヶ谷夫妻のような状態ならば、そもそもこの案は成り立たない。普段は照れくさくて言っていないからこそ、不意打ちが如く効果を発揮する訳だが……だからこそ言
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