第五十四話 吟遊詩人その六
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「将来のことを考えてね」
「三つもか」
「そうなの」
「成程な、真面目なんだな」
「そうかしら」
「俺なんかそこまで考えてねえよ」
久志は眉をいささか顰めさせて自分のことを話した、その首は自然と右の方にやや傾けられている。
「まあ大学卒業出来たらな」
「いいって考えてるの」
「そうなんだよ」
そうした風だというのだ。
「俺はな」
「だから私にそう言うのね」
「真面目だよ、大学出れたらいいさ」
またこう言った久志だった。
「そして大学出たらな」
「それからは」
「就職もな」
「就職出来たところになのね」
「そうとしか考えてないさ」
あまり深く考えていないというのだ。
「どうもな」
「いい加減というのね」
「そうなんだよ、しかしあんたは違うか」
「そこまで言われると恥ずかしいわ」
清音は久志に照れ臭そうに笑って返した、とはいっても顔は赤らんではいない。
「どうもね」
「じゃあ止めるな」
「そうしてね」
「ああ、それでな」
「これからのことね」
「俺達があんたに会う理由はわかるよな」
微笑んでだ、久志は清音に話した。
「それは」
「私も一緒にね」
「仲間になってな」
そうしてというのだ。
「戦ってそのうえでな」
「この島、そして世界を救う」
「海の魔神を倒してな」
彼等が倒すとされているこの存在をというのだ。
「そうしてくれるか?」
「貴方達に会うのはまだまだ先と思っていたわ」
すぐには答えずにだ、清音は久志にまずはこう返した。
「正直ね」
「そうだったんだな」
「けれど人の出会いはわからないわね」
「神様のお引き寄せだしな」
「そうね、もう人ではね」
それこそとだ、清音はすっと笑って応えた。
「それはわからないわね」
「偶然に思えてな」
「実は違うわね」
「運命って奴だな」
それが人と人の出会いだというのだ。
「まさにな、それでな」
「私達は今会った」
「そしてな」
「これからはね」
「ああ、一緒に旅をしてくれるか?」
「そしてよね」
「十二人揃ったらな」
久志はそれからのことも話した。
「勢力を旗揚げしてな」
「島を統一する為に戦うのね」
「そうしてくれるか?」
こう誘いをかけるのだった。
「あんたもな」
「返事を言うわね」
ここまで聞いてだ、清音はあらためてこう切り出した。
「そうするわね」
「ああ、頼む」
「宜しく」
これが清音の返事だった。
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