生存戦 3
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ャイルの矜持はひどく傷ついた。
「胆だ、俺には胆が足りねぇ!」
胆力だけは人一倍。たとえ銃口をむけられても眉ひとつ動かさない自分が、見るからにか弱い少女に精神力勝負で敗北したことにずっとさいなまれていた。
そんな鬱々とした日々を過ごしていた時に異邦人との決闘が流行りだした。
「へっ、おもしろいやりかたするじゃねえか」
ストリックランドをはじめ多くの生徒から卑怯だの奇策だのと非難される秋芳の戦いかたはジャイルの目には痛快に映り、沈んだ気持ちを忘れさせた。
ダーティなケンカ殺法はジャイルも望むところだ。剣だろうが魔術だろうが素手だろうが、どんな手を使ってでも勝てばいい。
ハインケルの言うように、ジャイルに秋芳に対する遺恨はない。むしろ堅苦しい学院に風穴を開ける横紙破りの行動に好感を抱いているくらいだ。
そして今度は生存戦だという。
参加は自由。ただし秋芳の対戦者は総じてストリックランドからマキシム流戦闘術の教えを三週間受けること。
あやしげな教えを三週間も受けるのは気が引けたが、生存戦という大がかりな演習には惹かれた。
しかも相手は決闘に連戦連勝中の騎士爵。相手にとって不足はない。
胆を鍛える、いい機会だ。
くさくさした気持ちを忘れさせてくれる。
これが、ジャイルが生存戦に参加した理由である。
「けれども、あのジャイルにこんなワイルドライフのスキルがあったなんて、それこそ意外だったよ。いったいどこでこんなことおぼえたんだい?」
「たまに下水道のバイトをしているって聞いたことがあるけど、他にも野外活動とか――」
ベニアーノとルネリリオ。陽気なふたりの問いかけは沼から聞こえてきた叫び声にさえぎられた。
それは若い女性の悲鳴だった。
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