生存戦 3
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ことも、カモ・アキヨシの唱える魔術の持つ可能性、汎用性を実践して衆目に理解させるため。……できるやつだ。この生徒をセリカ=アルフォネアに、あの魔女に取られたのは実に不本意だ)
どちらかといえば保守派に属するハーレイだが、実は秋芳の入学の賛成派筆頭だった。
優秀な生徒をひとりでも多く学院に入れたいと思う一方で、規則を重んじる彼は中途編入を良しとせず、来年度からの入学を唱えていた。
あわよくば自身のクラスに編入させようと。
そこにセリカの鶴の一声で秋芳の即時入学が決まり、さらには担当クラスを持たない彼女の唯一の生徒となってしまった。
優秀な生徒はみずからの傘下にしておきたいところなのだが、まんまとかすめ取られてしまったと、ハーレイは感じていた。
(我が校の伝統と格式を無視した、武辺一辺倒の下品で粗野なマキシム主義。それを一蹴し、それを蔓延させようとするグローリー=ストリックランドめが恥をかくのは痛快だが、それをセリカ=アルフォネアの手柄あつかいされるのは許しがたい! ぐぬぬ……)
「あ〜、今日はもう遅いから私は帰るわ。明日の夜までには決着がついてそうだな」
講師たちにも自身の生活や明日の授業がある。緊急時でも対応できるよう夜通しで見守る者以外は離席し、あとには今回の生存戦にひときわ注目している者だけが残った。
「ええい、なにをしている。こそこそと隠れることしかできない逃げネズミなぞとっとと見つけ出して殲滅しろ! 見敵必殺! 総員特攻! 撃ちてし止まん! 飢えがなんだ、渇きがどうした! 魔導士は食わねど高楊枝、欲しがりません勝つまでは!」
真夜中の学院に叱咤激励するストリックランドの声が響く。
焼け焦げた皮に恐る恐る口を近づけ、ひと口かじると濃厚な脂身が舌をとろけさせた。
「う、美味い!」
柔らかい肉質に淡白だがしっかりとした味は牛肉に近い。ガマガエルを縦長に押し潰したようなグロテスクな見た目からは想像もつかない美味にクライス=アインツの口から称賛の声が漏れた。
「……だから言っただろう、スワンプサラマンダーは火を通せば牛みたいな味になるって」
スワンプサラマンダー。サラマンダーとあるが、幻獣や精霊に分類される火蜥蜴ではない。日本でいうオオサンショウウオの仲間だ。
「でもちょっと泥臭いわ……」
「天然物だからな」
ジャイル=ウルファートが手にしたダガーで仕止めたキラークラブを器用に解体していた。犬ほどの大きさで海水から淡水域まで幅広く棲息し、殺人蟹の名前通り危険な生き物ではあるが、身は少ないが食用になるし、殻は鍋などに使える。
脱落者が相次ぐなか、クライス、ハインケル、ジャイル、エナ、ベニアーノ、ルネリリオの六人
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