生存戦 3
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れたこの辺りは全体から見れば入り口に近い。
秋芳が下調べした限りではそのような蛇は生息していないはずであった。
そう、この三週間のあいだに秋芳はあらかじめ生存戦の場を歩き回り、地形の把握に努めた。
最低限の土地勘がなければ、潜伏してやり過ごすことはむずかしい。
ストリックランド派の生徒がひたすら戦闘訓練にいそしむなか、秋芳は生存戦の場を探索し続けていたのだ。
もちろん許可を得ての行動である。
そして相手側が戦いの場の自全調査をまったくしていないことを知り、あきれてしまった。
戦いを地図の上でしか考えていない。
実に愚かで危険な考えだ。
レザリア王国との緊張が高まるなかで、このような近視眼的な思考の持ち主が軍学校としての側面も持つ魔術学院の講師として存在することに、秋芳は危惧の念を抱かずにはいられなかった。
「馬鹿な、あり得ん。こんな常識外れの……!?」
秋芳がなにか小賢しい真似をしてくるとは予想していたが、この展開はストリックランドの予想のはるか上をゆくものだった。
「戦いもせずにこそこそと逃げ回るとは、戦う意思なしと判断してやつの負けにするべきだ!」
「――これが決闘や魔導兵団戦ならば、相手に背を向けて逃げ回る行為は戦意なしと見なして彼の負けを宣告してもいいでしょう。しかし生存戦は直接戦闘能力、状況判断力、継戦能力。魔術師として力のすべてを試される。持久戦に持ち込むことは反則でもなんでもない」
初手から見て秋芳が持久戦をしかけていることは明らか。戦意がないとは見なさない。
学院内で状況を見守るストリックランド以外の講師たちはそう判断した。
「潜伏すること、潜伏している相手を発見し殲滅すること。野外でのサバイバル術も有事における魔導士≠ノ必要とされる能力だ。それとも戦争に備えたマキシム主義にはそのような教えはなかったのかな?」
「ぐぬぬ……」
「あっはっは! ま〜たひとり脱落したぞ。おまえのところの生徒はひ弱だなぁ。だいたい野外活動のスキルくらい習得させておけよ。そんなのは魔導探索術の基本中の基本だろ。水や食料も確保できない青二才に生存戦なんか一〇〇年早くないか?」
「ぐぬぬぬぬぬぬ〜ッ!」
伝統と格式ある学院の教育方針を否定して戦闘に偏った教えを広めるストリックランドは他の講師たちに煙たがられていた。
今回の生存戦で彼の面子が潰れることを内心望んでいる者は多い。
(一騎討ちに代表される騎士の勲、派手な攻性呪文を駆使する魔術師の力。それらにくらべて地味で軽視されがちだが補給や兵站は実際の戦争でもっとも重要となる。生存戦という極めて実戦に近い競技でそれを知らしめるため、あえてこのような戦いを選んだのだろう。思えば決闘でクレバーな戦法を使い続けた
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