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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
生存戦 3
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ないが、それでも熊や狼といった生身の人間にとってはじゅうぶん驚異となる獣と遭遇することがあるのであなどれない。
 そして、自然そのものも。

「《汚れ無き雫よ・真白き小瓶を・清きに満たせ》」

 幾重にも草を重ねて作った器に汲んだ沼の水から茶褐色が抜け落ち、たちまち透明な清水となった。
 【ウォーター・ピュリフィケーション】。泥水や毒物が混ざった水であっても、たちどころに不純物を取り除いて清潔な真水にすることができる。液体状であれば魔法の(ポーション)であっても相応のマナを消費すれば無害な水にすることが可能。
 ただしこの呪文≠ナは生物の体液に対して行使し、その生物を害することはできない。

「甘露、甘露。音羽の滝や銀河泉の名水に引けを取らない馥郁たる妙味なり」

 およそ飲料水にはふさわしくない泥水を無害な飲み水に変えた魔術の結果に秋芳は大いに満足した。
 生命維持に必要な水分補給。飲料水の確保もまた野外における生存戦では重要となる。
 まして今回のような時間無制限の場合はなおさらだ。人がひとりで持ち運べる水と食糧の量には限度がある。現地で調達しなければならない。
 【ヒート・マテリアル】で加熱することで沸かしたお湯に採取した野草を入れる。
 コーカスとチャイブ。日本でいう行者ニンニクとニラである。
 これらはそれぞれ有毒植物であるイヌサフランとスイセンに酷似しているため、食用にするさいは注意が必要である。山菜採りなどで、見た目が似ていて確実な判断ができない時は絶対に採取したり食べたりはしないのが鉄則だ。
 秋芳は幼い頃に修めた山岳修行のさいに毒草について学び、見分けることができた。
 またこの世界についての動植物に関する知識も学院で学んでいる。そうでなくては魔術師の必須スキルである錬金術など習得できない。

「ルヴァフォースはドラゴンやグリフォンが実在するファンタジー世界なんだから、俺のいた世界の動植物が存在していてもおかしくはない。中世ヨーロッパ風ファンタジー世界にじゃがいもが出てくるのはおかしいとかいう類のツッコミは野暮野暮!」

 どこかのだれかにむかって意味不明な主張をしつつ、野草のスープで腹を満たした。

「鳥獣草木、百果百草。緑にあふれた山は食べ物の宝庫だな、珍しい薬草も手に入るし。それらを捕る技術と知識があれば、の話だが」

 そう独語し、山ウドの塊にかじりつく。
 生存戦三日目。秋芳はマキシム主義ストリックランド派の生徒を相手に兵糧攻めによる持久戦を仕掛けていた。
 迷いの森に降り立った秋芳はまず【サモン・インセクト】で大量のイナゴを召喚し、周囲に放った。狙いは生徒たちの所持する食料。無数のイナゴに喰い荒らされ、彼らが所持していた三日分の食料は一瞬にして消えてしまった。
 秋
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