第二十六話:殺人鬼、帰省す。
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やろう」
ラシャは一呼吸置くと、外へ飛び出していった。
「さて鬼が出るか蛇が出るか……」
ビール缶を置いて身構える千冬。数分後、戻ってきたラシャは抱えてきたスーパーの袋の中身をカジノのディーラーが如くテーブルに並べた。
「これは……」
「チーカマ、チーチク、干しイカ、塩辛、ジャーキーにブロックチーズ……呑むには最低限揃えておくものだ、覚えておけ」
「ふっ、完敗だな。今回ばかりは負けたよラシャ」
「ソレを言うなら乾杯だろ千冬ちゃん」
そう言いつつビール缶を軽くぶつけ合う様は完全に駄目な大人達であった。
テーブルのつまみが減少していくのに反比例して部屋に酒臭さが充満していく。ラシャは、千冬の飲酒ペースがいつもより早いことに気付く。いくら鋼の肝臓を持っていたとしても、急性アルコール中毒を心配せざるを得ない状況に、ラシャは待ったをかけるべく手を伸ばした。
「そろそろよせ、晩飯も控えてるし大体飲み過ぎだぞ?」
「んあぁ?」
何とも情けない声を上げて反応を返す千冬。ラシャはコイツはもうダメだと判断し、事前に用意しておいたミネラルウォーターを手に取ると、千冬から空になっているビール缶を取り上げた。
「やらぁ、まだのむぅ……」
「残りの量もわからねえくらい酔ってるじゃねえか。そんな状況じゃあ酒の味もクソもないだろう。何があったか知らないがそこまで呑むほどのことか!?」
刹那、ラシャの天地が逆転した。いや、千冬によって投げ飛ばされて組み伏せられたのだ。
「何があったか……だと?」
床に叩きつけられた衝撃で平衡感覚を取り戻そうとあがいていたラシャの脳は、続いてお見舞いされた千冬の頭突きによってさらにかき乱された。
「お前が帰ってきたじゃないか、ここに!なのにその態度は何なんだ!?いつも理由を作って居なくなって……私や一夏がどれほど心配したか……」
千冬の声に嗚咽が混ざる。ラシャは10年近く根無し草を続けていたために一つの家屋に長居することをほぼ忘れてしまっていた。今ねぐらにしているIS学園の部屋でさえ引き払う時はあっさり引き払えてしまう程にものがない。
「……そうか、そうだな。心配掛けたなぁ」
「遅すぎだばかぁ!!」
「すまなかっ……おむっ!?」
唐突にラシャは千冬に唇を奪われた。熱を持った千冬の舌がラシャの口蓋を、歯をこじ開けて、舌と絡まり合う。同時に千冬の両腕がラシャの後頭部に優しく、しかし逃さぬように添えられ、抱きしめられる。
長い、長いキスが終わった。蕾が花開くように顔を離した二人だが、まだ体は密着したままだ。離れたく──放したくないのであろう。千冬の両腕はガッチリとラシャの背をホールドしている。
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