第二十六話:殺人鬼、帰省す。
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る。これから取り戻せばいい。それともお前はこれから俺と心中するつもりだったのか?」
喝采を上げるように蝉の声が元に戻る。
「俺は……」
「解っているとも。連中が憎くないのかと言いたいのだろう?無論憎い。だが、今直ぐに出来ることはたかが知れている。故に今は何もしない。お前も連中に目にもの見せたければ胆を舐めることを覚えろ」
いつの間にか、ラシャは織斑姉弟の同居人としてではなく、復讐に燃える殺人鬼として一夏に話していることに気づいた。
「良いか、敵というものは直ぐ戦って勝てることってのは稀なんだ。大抵は相手のことをよく調べて弱点を探って勝つんだよ。宮本武蔵とかがよくやってたやつだな」
「でもよ、やっぱり卑怯じゃないか?それ」
「じゃあ今直ぐ俺を倒してみせろ、そうすれば認めてやる」
ラシャは右腕の袖から警棒を取り出すと正眼に構えた。
「うぉぉ!?待った待ったあ!!」
咄嗟に両腕を上げて降伏の意思を伝える。ラシャは呆れ顔で警棒を袖に引っ込めた。
「どうだ?相手を知る事を怠るってのはこういうことだ戦って負ければソレでおしまい。下手すりゃ死ぬ。死んだらソレまでだ」
「……」
ラシャは一夏の頭を乱雑に撫でた。
「お前は俺よりまだ若い。だからつまらないことでドジ踏んで欲しくないんだ。どうしても悲願を成就させたいならそのための力を着けるんだ。そのためなら俺や千冬ちゃんは喜んで協力するぜ?」
「わ、わかったよ」
「さて、一夏。帰んな。千冬ちゃんが怒る前によ」
気付けば既に正午を回っており、長針は20分に届こうとしている。途端に一夏の顔が青ざめる。
「やべえ!アイス買ってたの忘れてた!……あ、ああああああああああ!!袋の中が甘ったるい汁まみれにっっっ!!!」
真夏の直射日光をこれでもかとばかりに浴びまくった買い物袋からは、甘ったるくも爽やかなサイダーやストロベリーの香りが露骨に漂い、中身の惨状を雄弁に物語っていた。これでは昼食の材料も滅茶苦茶であろう。
「うぁお」
二人の脳裏に、昼飯を滅茶苦茶にされて怒り狂う千冬の姿が浮かび上がる。
「じゃあ俺は帰るわ、一夏よ、生きていたらなんか奢るぜ」
いそいそと踵を返すラシャの足元に一夏はしがみつく。はずみでラシャは顔面から地面に突っ込む形で転倒するが、必死に灼熱のアスファルトに爪を立てんばかりに掴みかかり、ひたすら前に進もうとする。
「ラシャ兄も来いよぉ!俺だけでどうしろって言うんだよぉ!!絶対死んじまうよ俺!!」
「俺が行ったところでどうにもならんのは目に見えているだろうが!離せコラ!!」
「嫌だあ!!死なば諸共ォ!!」
非常にしょうもない攻防戦を繰り広げてい
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