白と黒
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かかっていそうなそんな雰囲気がレツには感じられる。しかし、一方のカナはいたって落ち着いた様子を見せていた
「・・・・随分飛ばされたわね」
「早く戻ろうぜ!あいつ一人であのバケモンとやり合わせる訳にはいかねえ!」
レツがハルマのいる場所に戻ろうとしても、カナは動かない。彼女は理解していたのだろう。あの行動が自分たちを守る為のものだと。同時に戻っても死ぬだけかもしれないと、感じ取っていたのかもしれない。暗い表情で、何かを耐えるようにしていた
「ねえ。私たちが言って何か力になれると思う?」
「はあ?何言ってんだよ」
レツは苛立った様子で返事をする。すぐにでもハルマの元へ行こうとしているのが分かる。しかし、カナはそれをさせないようにレツの前に立ち塞がり、話し出す
「ハルの力は私たちより上よ。はっきり言うけど・・・・私たちが行っても邪魔になるだけじゃない?」
「ここにいろって事かよ」
「そうね。私たちが行っても足を引っ張るだけなら行かない方がいいわ。それが今、私たちに出来るチームワークよ」
レツは怒鳴りつけそうになるのをグッと堪え、自身の心を落ち着かせようと小さく息を吐く。あくまで冷静にと、抑揚のない声で彼はカナに語りかける
「それでも。あいつを見殺しになんかできねーよ。行かねえってんなら、行かなくてもいいぜ。でもオレは、いつまでも引きずる後悔はしたくねえ。初めてできたダチを見捨てて、オレは生きるなんてのは無理だしよ」
それに、と彼は言葉を続けた
「後悔するなら、オレはしなかった後悔より・・・・やってできなかった後悔を選ぶぜ」
「まっ!選ぶのは自分自身だけどな!でも、オレはもう決めてる。どっちにすんのかは、自分で決めろよ!」
レツは歩みを止めず、カナの横を過ぎ去った
「っ・・・・あんたに言われなくても、分かってるわよ」
しかし、カナは動けない。まるで見えない鎖が彼女を縛っているかのように。レツの遠くなる背中を見る事しか出来ないでいた
「でも、怖いの。私は・・・・」
零れる涙。それがカナの心の代弁をしているようだった。助けに行きたいという気持ちと、恐怖を抱く気持ち。二つの相反する感情が彼女を襲う
「私は、どうすればいいのよ・・・・・・」
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