第六十四話
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なぜこいつがそんなことを考えていたのか、よくわからなかった。むしろ、自慢してもいいレベルだと思うのに。
「…………別に。それじゃ、私は花摘みに来ただけだから。」
若葉はそう言うと、俺達に背を向けて去っていった。
その背中は、寂しそうでも何でもない…………ただ、歩いているだけ。俺達に何も伝わってこない、無感情な背中だった。
「…………めんどくさいのが居るな。」
「…………めんどくさいのが居るね。」
俺達はため息をついた。
……いや、何も若葉だけじゃない。この鎮守府には、めんどくさいことが山積みだ。
「…………なぁ、拓海。ここの鎮守府の艦娘ってさ、本当に劣悪な環境にいたってだけなのか?」
だから、それらを一つずつ解決していこう。
俺がそう尋ねると、拓海は深く思案しているような顔をして黙った。
「…………詳しくは、立場上言えない。でも、どんなことが彼女達の身に起きているのかは言える。」
立場上。
その言葉を、拓海から聞く日が来るとは思わなかった。正直、納得行かないと言えば納得行かない。
でも、仕方ないことだ。
俺は艦娘。拓海は提督。
俺たちの仕事は戦うことだけだ。それ以外の全てを提督に押し付けているんだ。隠し事ぐらい許されるだろう…………と、自分に言い聞かせる。
拓海はそんな俺の気持ちを知ってか知らずか、一部分だけは教えてくれた。
「ここの鎮守府…………いや、今まで艦娘になってきた女の子達の半分は、無理矢理、もしくは仕方なく艦娘になった娘たちだ。」
―食堂―
「あれ、千尋さん?拓海さんは?」
俺が食堂に帰ってくると、食堂の電気は既に消えていた。どうやら、全員寝てしまったらしい。
「執務室だよ。あそこの中のGだけは処理して、他の部屋や廊下には○ルサンしてきた。」
どうやら、いくらか書類整理があったらしい。それに、男である拓海がみんなと一緒の場所で寝るのは些か問題があるだろうとも言っていた。
俺も男だけどな。
「そうですか……お疲れ様でした。」
春雨はそう言ってニッコリ笑ってくれた。
…………可愛いなぁ。
俺はそんなことを思いながら、改めて春雨をまじまじと見た。
長い横で纏められたピンクの髪の毛。
真っ赤な瞳。
明らかに常人の物ではないそれを生まれつき持っている春雨は、今までどんな風に世界を見てきたのだろうか?
…………多分、拓海はそれを考えて、春雨をここに連れてきたのだろう。
「
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