143 飛騨娘
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何度も繰り返した。特にジャンプではトリプルがシングルやダブルになるというミスに気を付けた。そうでないと本番では減点となってしまうからである。藤木は少し疲れて休もうと思いリンクを出た。その時・・・。
「ねえ君」
不意に誰かに声を掛けられた。一人の女子が近づいていた。年は藤木よりも年上に見えた。
「君もしかして飛騨高山のスケート場で滑ってなかった?」
「え?うん、一度あるよ。見てたのかい?」
「ええ、おりもそこにいてな、あの片山さんから才能認められたんでしょ?見てたのよ」
「あ、そうだったんですか」
「まさか君も大会に出てたなんてな。おりは古宮美鈴。岐阜県の五年生で女子スケートの中部大会の金賞獲った飛騨娘よ」
「そうだったんですか!僕は静岡県の三年生の藤木茂と言います!」
「へえ、じゃああの時は旅行に来てたんだ。じゃあ、一緒にいた子とかは友達なの?」
「はい、たまたま一緒に滑る事になってたので・・・」
「そうか、それに藤木君は背が高いな。もうちょっと年が上かと思ったよ。片山さんに認められたその実力本番で見せてもらうよ」
「はい、古宮さんも片山さんの事を知ってるんですか?」
「うん、あの人がオリンピックの選手だった事も知ってるよ。それにおりも片山さんに認められようと必死にここまで来たからな。賞獲って世界大会に行こうって考えてるよ」
「はい、お互い頑張りましょう!」
「うん、じゃあおりはまた練習してくるな」
古宮美鈴はそう言ってリンクで滑り出した。彼女の演技もなかなかのものだと藤木は思った。特に凄いと思うのがトウループやサルコウだった。点数が低いこれらジャンプが美しく、ルッツやアクセル並みの点数を付けてもいいくらいのできだったからである。
(すごいな・・・。男子にも佐野君や吉岡君、瓜原君も凄いけど、大会は男女別とはいえ女子にも圧倒する人はいるんだな・・・。あの古宮さん、絶対に賞獲るだろうな・・・。もしかして一緒に世界大会に出る事になるかも・・・)
藤木は古宮が金賞候補になると予想していた。その時、とある女子の声を小耳に挟んだ。どうやら一人の女子が別の女子に話しかけたようだった。
「ねゑ、貴方、桂川美葡さんでしょ。久しぶり」
「あ、貴方は確か関東大会で銀賞を獲った・・・」
「ゑゑ、そうよ、黄花蜜代よ。あの時は貴方に負けちゃったけど、今度は貴方を超ゑて見せるわ!じゃあ、本番でね!」
「うん・・・」
黄花蜜代と名乗った女子はリンクに向かい、滑り出した。藤木は二人の会話を聞いて桂川美葡という名前にある事を思い出し、その女子に話しかける事にした。
「ねえ、君がもしかして桂川美葡ちゃんかい!?」
「・・・え?」
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