暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜白猫と黒蝶の即興曲〜
交わらない点:Point before#6
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のみならず、
初期化
(
リセット
)
までされた結果生まれ直すユナはもう元のユナではない。それが、その事実が鋭二にはこれ以上なく嫌だった。
勝手かもしれない。どうしようもなく醜いエゴかもしれない。
だがそれでも、かつての《彼女》とまったく同じ顔の少女が定義次第とはいえ死ぬのは、我慢ならなかった。
だから鋭二は、あえてそこから先に踏み入る勇気を出すことはできなかった。
知りたくない。知ってはいけない。
だって知ってしまえば、自分はそれに対処しなければならなくなるのだから。
「おいで。いつもの庭園に行こう」
「……うん」
少女の顎が小さく縦に動くのを見届けた後、鋭二はオーグマーを通じて視界端に浮かぶメニュータブを引っ張り出す。
オーグマーは基本的には生活に沿うガジェットというのを目的としたAR機器だが、四月から本格稼働する本命ゲームタイトルでは景色を塗り替えるという大規模な機能をふんだんに使っている。それは決してそのゲームだけの専売特許というわけではない。
制作初期から、その準VRとでも言うべき視界変遷をテストする目的で、テスター用試作機の鋭二のオーグマーにはその機能を任意で使えるアプリが入っている。
そのアイコンをタッチし、二人でよく入り浸っている庭園ステージを選択した。
すぐさまその意を汲んだオーグマーが鋭二の視界を操作。年を越したばかりの研究室は、麗らかな春の陽気すらも錯覚する庭園へとたちまちのうちに姿を変えた。無機質な壁は遥か彼方に優美な稜線を備える壮大な山脈に変わり、近くには自然の中にあるようなコテージ。
まるでカナダかどこかにある人里離れた貸し別荘にやってきたような光景の中、
背景小物
(
クリッター
)
の白い蝶がひらひらと静かに舞っていた。
それをぼんやりと眺めながら、青年は改めてユナに目を向ける。
鋭二とオーグマーを通じて視覚情報を共有している少女の目にも、自分と同じ景色が見えているはずだ。にも拘らず、鬱々とした表情で陰りを見せる少女を見、一瞬だけ口元を自己嫌悪で歪ませた鋭二はそれを押し殺して言葉を紡ぐ。
「大丈夫だ、ユナ。僕は怒ってないよ」
「……本当?」
「本当さ。それに、今日は君の久しぶりの休みだったんだ。仕事をほっぽりだしてるんならともかく、休みの日くらい自分の行きたいところに行けばいい」
違う。それは人間の理屈だ。ただのAIである彼女に本来の意味での休日はない。
だがそれを必死に感情の仮面の下に覆い隠し、鋭二は機械的に四肢を動かす。
「――――今日は予定が入ってるけど、次の調整日を使って昨日やるはずだったフルチェックをやろう。それで何事もなし、だ」
重村教授はおそらく再起動を要求するだろうが、すでにしたと言えばバレはしない
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