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千雨の幻想
10時間目
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乱入する人物が現れた。
 
「どうも〜〜神鳴流、月詠いいます〜〜おはつに〜〜」

 長短二本の小太刀を携えた刹那と同い年くらいの少女、月詠である。
 そのおおらかな雰囲気とは裏腹に彼女の剣技は鋭く、刹那も容易に彼女を倒すことができず完全に足止めされる形となった。

 これで完全に二人を足止めできたと安心する千草だったが、彼女はここにもう一人、先ほど自身が作り出した炎を消し飛ばした魔法使いの存在を忘れていた。

魔法の射手(サンタ・マギカ)戒めの風矢(アエール・カブトウーラエ)!!」

 無防備だった千草へ11の風の矢が迫る。もはやこれまでかと思われた千草がとった行動は彼女(・・)にとってもっとも逆鱗に触れる行為だった。

「あひぃっ お助けぇ!」

 自らさらった木乃香をネギにむける、つまりは盾にするという卑劣極まる行為だった。

「あ! 曲がれ!!」

 魔法が木乃香にあたる寸前で、すべての魔法を別方向へそらす。

「あら……はは助かりましたえ、この調子でこの娘をどんどん利用させ」

 利用させてもらう、と言いかけて彼女は凍りついた。
 それは千草だけではない、彼女たちを見ていたネギ、戦闘中であろうとも千草へ意識を向けていた刹那やそれにつられて彼女のほうを向いた月詠、さらに異変を察知して同じく千草たちのほうを向いた明日菜、その場にいる全員が信じられないものを見た。

「ひどいなー、もうちょっとで怪我するとこやったでー」

 そう話すのは千草が盾にした近衛木乃香、ただし首が本来の可動域を大きく逸脱し、180度回転した状態で千草を見つめていた。
 背面にて正面、普通の人間なら死んでいるはずのそれはケタケタと笑い、手足の関節を無視して無理やり彼女へ抱きつく。

「ひぃ!? なんなんやこれは!?」

 彼女は急ぎ引き離そうとするが、少女とは思えないその怪力は彼女の力では指一本すら動かすことができない。
 突然の事態に硬直するネギたちと、自身のよく知る木乃香の人間あらざる行動に困惑を隠せないでいる刹那。
 その硬直を打ち破ったのは一人の大きな笑い声だった。

「あはははははははあははははははは!! いやあ、こうも引っかかってくれるとは最高だわ!」

 その声に一斉に千草のさらに上段、最上段で笑う一人の人間を見つける。

「あ、あんたは!」

「キツネさん!!」

 麻帆良学園の制服に狐の面を身につけた少女、千雨がそこにいた。










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