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レーヴァティン
第五十三話 水の都にてその十一

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「これからな」
「ああ、じゃあな」
「今からご主人に話すな」
「それまでちょっと待っててくれ」
「ここでな」
「いいぜ、じゃあ待たせてもらうな」 
 久志は自分達のことにまだ驚いている門番達に明るい態度のまま答えた、そうして彼等のうちの一人が屋敷の方に行きその彼を待ってだった。
 そのうえでだ、戻ってきた彼等にこう言われた。
「入っていいそうだ」
「屋敷の中にか」
「ああ、そうだ」
 その通りという返事だった。
「俺が案内するな」
「悪いな」
「いいさ、しかしまさかあんた達まで来てるなんてな」
 案内役を申し出た門番は信じられないという顔だった、茶色の髪に青い目が実によく似合っている青年だ。
「想像もしてなかったぜ」
「ヒーローは来るべき場所に来るってな」
「それは舞台の言葉かい?」
「俺が今考えた言葉だよ」
 久志は門番に笑って答えた。
「今な」
「そうか、今か」
「ああ、いい言葉だろ」
「文豪だったらもっとよかったな」
 門番はその久志にやれやれといった笑顔で返した、久志のどうだという笑顔とはまた違う笑顔だった。
「それも遥かにな」
「じゃあ英雄じゃ駄目か」
「これからなるのかい?」
「いや、英雄は自分でなるって言ってなるものじゃないだろ」
 久志は笑みを少し真面目なものが入ったものにさせて門番に返した。
「他の人間に言われてなるんだよ」
「へえ、そんなものか」
「ああ、だから今はな」
「英雄じゃないか」
「言われる様になる様にしてるさ」
「そうか、今の言葉は決まったぜ」
 ヒーロー云々の言葉よりもとだ、門番は久志に今度はこう言った。
「いい言葉だったぜ」
「英雄は他の人間に言われてなる、か」
「ああ、それはな」
 まさにというのだ。
「いい言葉だったと言っておくぜ」
「それは何よりだな、じゃあな」
「ああ、今からか」
「邪魔させてもらうぜ」
「それじゃあな」
 軽いやり取りを経てだ、そのうえでだった。
 久志達はグリマルディ家の屋敷の敷地内に入った、そうして八人目の仲間かも知れない吟遊詩人と会うのだった。


第五十三話   完


                 2018・2・8
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