第五十三話 水の都にてその八
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「恐ろしい一面もあります」
「成程な、優しいとか可憐とかな」
「そうした面も確かにありますが」
「怖い一面もあるか」
「ギリシア神話でもそうですね」
「ああ、あそこの神話はな」
順一が出したこちらの神話にも頷く久志だった。
「結構というかやたらな」
「残酷な話が多く」
「女の人もやるな」
人間の女だけでなく女神もだ、この神話は男女共にそれこそ人間でも神でも妖精でもやたらとそうした行動を採る。
「八つ裂きとかそうしたことをな」
「女性も男性と同じくです」
「残酷で苛烈ってことか」
「それが女性同士になりますと」
「余計に出るんだな」
「むしろ男性同士以上よりも」
これは順一の見立てだった。
「出ます」
「怖いな、女の人ってのは」
「浮気なんかするとな」
芳直は久志に真剣な目で言った。
「俺っちがいた町でもあったぜ」
「あのバイキングの街でか」
「奇麗な奥さんいる奴が酒場の若い娘と出来たんだよ」
「よくある展開だな」
久志は芳直のその話にまずは冷静な声で返した。
「それで、だよな」
「ああ、それでその奥さんがな」
「あれだろ、包丁なり持ってな」
「ああ、マジで持ち出してな」
包丁、即ち凶器をというのだ。
「旦那さん刺して浮気相手の店に行ってな」
「そこでもブスリか」
「いや、娘も包丁出して応戦してな」
「逆キレか」
「そうだよ、それで血まみれの大喧嘩になったんだよ」
「それは女同士の喧嘩か」
「さっきのブルンヒルデみたいにだよ」
こちらは家庭の話で彼女の話の様に国家単位ではないにしてもだ。
「もう壮絶な大喧嘩だったんだよ」
「殺し合いのか」
「幸い誰も死ななかったけれどな」
「刺された旦那さんもか」
「死にかけたけれど術で生き返らされる様なことはなかったさ」
「それは何よりだな」
「ただ刺した奥さん牢に入れられたよ」
そうなったというのだ。
「それで御前等が来た時もな」
「牢にいたんだな」
「ああ、旦那も村八分だったよ」
「騒動の元凶だしな」
「浮気相手も牢に行ってな」
「散々な話だな」
「浮気の結果なんてそんなものさ、まあそうしたことがあったからな」
それでと言う芳直だった。
「俺っちもそうした話はわかるつもりさ」
「女は怖いか」
「女だって人間だからな」
男と同じくだ。
「だから怖い一面もあるさ」
「そういうことだな」
「それで順一が言った通りにな」
「女同士だとか」
「その怖い面が余計に出るんだよ」
相手が同性、つまり自分と同じ相手ならだ。
「源氏物語でも生霊になってたし雨月物語でもだろ」
「日本でもか」
「そうさ、まあ女には幻想は抱くなってことだ」
「現実として見ろってことか」
「同じ人間だか
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