巻ノ百三十五 苦しい断その十
[8]前話 [2]次話
「それがしが何としてもです」
「大御所殿の御首を」
「はい、そして将軍殿も」
秀忠、彼もというのだ。
「是非です」
「その御首をですか」
「取ってみせましょう」
「そこまでお思いですか」
「はい、惣して豊臣の武士道を見せてやりましょう」
天下にというのだ。
「そうしてやりましょう」
「はい、それでは」
「真田殿の御考えに賛同致します」
「そしてそのうえで」
「この戦死ぬ気で戦い勝ちます」
己の決意も話した木村だった。
「何としても」
「大御所殿の首を挙げ」
「そうしますので」
「お命にかえても」
「その所存です」
「左様ですか」
「木村殿、それはどうか」
幸村は命を捨てようとする木村に言おうとしたがそれよりも前に明石が彼に言った。
「そう思いまするぞ」
「と、いいますと」
「武士は命を惜しまぬものですが」
「それでもですか」
「左様、命を粗末にするものではありません」
こう言うのだった。
「死のうとするのではなく」
「死ぬ気で戦いそうして」
「生きるものです」
「では」
「大御所殿の首を取られて」
そしてというのだ。
「城に帰られて下さい」
「そこで死ぬなというのですか」
「そうです、その首を右大臣様の前に持って来て下さい」
秀頼に家康の首を見せよというのだ、気むr尚その手で。
「そうされて下さい」
「それが武士の道でござるか」
「左様、それがしも死ぬつもりはありませぬし」
「何としてもですか」
「勝ちそしてです」
「生きられるのですか」
「そのおつもりです」
「そうですな、わしもです」
毛利も言ってきた。
「戦に勝ちますが」
「毛利殿もですか」
「家を再興させる為、ならば」
「死なずに」
「大名に返り咲きまする」
生きてそうしてというのだ。
「必ず」
「それではそれがしも」
「その様にお願い申す」
「ではそれがしも暴れまするが」
塙も明石と毛利の言葉を受けて言った。
「必ずや」
「はい、夜討ちをされても」
「必ずですな」
「生きて帰り最後まで」
「暴れられるべきです」
「左様ですな」
「各々方、宜しいか」
大野も諸将に話した、確かにこれまでのことで立場を失くしてしまっているがやはり大坂の執権は彼以外にいなかった。
治房の睨む視線を感じているがそれでもだ、大野はそれをものともせず諸将に話した。
「この度の戦の策は一つです」
「大御所殿の御首を取る」
「それしかない」
「最早ですな」
「それしか」
「その時を待ちその時が来れば」
まさにというのだ。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ