巻ノ百三十五 苦しい断その九
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「最早な」
「左様ですな」
「もう大坂の城は裸城です」
「戦になればすぐに大軍に迫られます」
「それこそ天守まで」
「しかも兵の数も減った」
先の戦がはじまった時と比べてだ、幸村はこのことも話した。
「そうなったな」
「はい、十万が今や五万八千」
「相当に減りましたな」
「四万以上も減りました」
「そのことも不利ですな」
「ならば一気に攻めてじゃ」
そうしてというのだ。
「大御所殿の首を取るしかじゃ」
「ありませぬな」
「幕府の総大将であるあの方の御首」
「それを」
「それしかなくなった、先の戦でもそれを考えたが」
今の戦はというのだ。
「その時よりも遥かにじゃ」
「今の戦では」
「そうすべきですな」
「むしろそれしかない」
「そうした状況ですな」
「そうじゃ、では戦になれば一気にじゃ」
主な軍勢を率いてというのだ。
「幕府の本陣を目指してな」
「そのうえで、ですな」
「そうしてですな」
「幕府を本陣を攻め落とし」
「一気に」
「大御所殿の御首を手に入れるぞ、よいな」
こう言ってそしてだった。
幸村は戦の策を練りはじめた、それは諸将達が集まっても同じだった。既に皆覚悟を決め兵達も配していた。
幸村のその策と布陣を聞いてだ、後藤が言った。
「最早ですな」
「はい、我等全てがです」
「死兵となりそのうえで」
「戦いそしてです」
「勝つしかないですな」
「そう思いまする、特に」
幸村は後藤に強い声で話した。
「大事なことはでござる
「大御所殿を討つかどうか」
「討てればそれで、です」
「戦は我等の勝ちじゃな」
「そうなります、しかし」
それがとも話した幸村だった。
「若しもです」
「大御所殿を討てねば」
「戦は我等の負けです」
「この城の有様ではのう」
長曾我部がここで言った。
「攻め込まれるとな」
「はい、敗れますな」
「守れるものではない」
今の大坂城ではとだ、長曾我部はあえて話した。
「本丸まで迫られてな」
「攻め落とされますな」
「そうなるからな」
だからだというのだ。
「ここはな」
「大御所殿の御首を手に入れ」
「勝つしかないな」
「そうしましょうぞ」
「それではな」
「確かに、です」
木村もここで話した。
「ここここに至ってはです」
「戦に勝つには」
「大御所殿の御首を取るしかありませぬ」
「木村殿もそう思われますな」
「はい、ではそれがしもです」
「大御所殿をですな」
「何としてもです」
強い決意で以てだ、木村は幸村に答えた。
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