ペルソナ3
2040話
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「あ、ゆかりちゃん。ちょっといい?」
望月が転校してきた日から数日後の放課後、ゆかりが部活に向かおうとしていると、山岸が俺達の教室に寄って、そう言う。
「おお、君も可愛いね。ね、誰かな?」
「え? あの、ちょっと……」
望月にしてみれば挨拶代わりの言葉だったのかもしれないが……山岸にしてみれば、自分がそういう風に言われるというのは完全に予想外だったのか、ちょっと戸惑った様子で望月に視線を向けていた。
客観的に見れば、山岸はそれなりに顔立ちは整ってる。
ゆかりや美鶴と違って、美人というよりは可愛いと表現すべき感じだが。
だが、山岸の場合は自分がそれなりに人気があるという点であまり実感はないのだろう。
……有里の恋人となっている時点でそれ以上は望んでおらず、満足しているというのも、あるかもしれないが。
もっとも、そのような性格だからこそ有里のファンクラブに敵視されてはいないのだろうが。
いや、正確には当然のように有里と付き合っているという点で嫉妬している者は多い。
だが、有里のファンクラブのメンバーは、本気で有里に恋しているというのではなく、皆でキャーキャー騒いでいる……いわゆる、おっかけの類のような者が多かった。
この辺は、美鶴や真田と同じような感じだな。
それと、有里を含めて巌戸台分寮のメンバーや、ゆかり、そして俺ともそれなりに親しいという事もあり、山岸が嫉妬による陰湿な行為をされるということはない。
正確には以前に何度かあったらしいのだが、どうやったのか、有里がその犯人を見つけて色々と報復したらしい。
……どうやっても何も、間違いなくペルソナを使ったんだろうが。
ともあれ、そんな訳で現在山岸にちょっかいを掛けるような相手はいない……訳ではないのだろうが、表立っては皆無だし、裏でもかなり少ない。
これで、もし山岸が調子に乗るような性格であれば、もっと色々と酷い目に遭っていた可能性はあるが。
「望月、その辺にしておけ。有里が睨んでいるぞ」
「別に睨んではいないよ」
俺の言葉にそう返す有里だったが、実際には睨んでいるという表現がピッタリ合うと思ったんだが。
まぁ、有里がそう言うのであれば、それはそれでいい。
それに望月と数日一緒の教室にいてみて分かったが、その性格は軽いというか、軟派な性格をしているのは間違いないが、相手が嫌がればそれ以上強引に迫ったりはしない。
つまり、きちんと引き際を弁えている……という表現が、この場合は一番正しいのか。
それだけに、山岸にそれ以上話し掛ける様子はなく、教室に残っていた他の女との会話を楽しみ始める。
「えっと……」
山岸の戸惑ったような様子に、元々声を掛けられたゆかりが席を立ち上がって近づいていく。
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ