巻ノ百三十五 苦しい断その五
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「そうしようぞ」
「それでは我等も」
「及ばずながらです」
「尽力します」
「右大臣様の為に」
「その様にな、わしはふがいない家臣であったが」
それでもというのだ。
「手を打ってじゃ」
「そうしてですな」
「その上で何としても」
「右大臣様をお助けし」
「お命だけは」
「そうする、既に腹は切るつもりであった」
それならというのだ。
「もう覚悟は出来ておるからな」
「何としてもですな」
「死ぬ気でことを進め」
「このことを果たされますか」
「お命にかけて」
「そうする、その為には真田殿もな」
幸村、彼にもというのだ。
「働いてもらう」
「十勇士にも」
「そして何としても」
「右大臣様だけは」
「そうする、そして戦はな」
これはというと。
「避けられぬならじゃ」
「懸命に戦い」
「そうして」
「勝つ」
「そうしますな」
「戦は勝たねばじゃ」
それこそというのだ。
「どうにもならぬな」
「はい、まさに」
「戦は」
「そうしたものですな」
「武士ならば」
「死力を尽くしてな、そうしてじゃ」
そのうえでとだ、さらに話す大野だった。
「右大臣様もお護りしようぞ」
「わかり申した」
大野の家臣達は主に応えた、彼等は既に死を覚悟していた。そのうえでもう避けることが出来なかった戦に向かっていた。
大坂城の雰囲気は変わった、講和してからの殺伐として荒れた裸城を見てのそれからだった。
意気込み楽しみにするものになっていた、彼等は明らかに戦を待ち望んでいた。
「さあ、いよいよぞ」
「また戦になるぞ」
「生きるか死ぬかじゃ」
「死ねばもうそれまで」
「生きれば栄達じゃ」
「二つに一つ」
「簡単な話じゃ」
笑って話していた、彼等にとってはこのまま裸城にいる方が苦痛で戦で散ればそれでよしであった。その為彼等の士気はむしろ冬の戦よりも高かった。
だがその彼等を見てだ、長曾我部は苦い顔で明石に言った。
「いかんのう」
「城の雰囲気がでござるな」
「皆死兵になっておる」
「自ら死のうという者達に」
「戦は死ぬものではない」
これが長曾我部の考えだった。
「戦い願いを果たすもの」
「だからですな」
「ああして皆死に急ぐ様なものはな」
「本来の戦に向かうものではない」
「自害と変わらぬ」
一軍でのそれと、というのだ。
「死ぬ気で戦い生きるのが戦でじゃ」
「死ぬ気で戦い死ぬのは」
「本来の戦ではない、だからな」
「長曾我部殿は危ういと言われるのですな」
「そうじゃ」
今の城の者達の自暴自棄の気持ち、それがというのだ。
「見ていてこれ程危ういと思ったことはない」
「確かに。言われてみますと」
明石も彼等のそのかえって死ねるこ
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