巻ノ百三十五 苦しい断その三
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「修理の護衛の者達をな」
「こちらからも送りたい」
「その様にな、しかしそれで出来ぬとなれば」
「修理殿の運と用心に期待しますか」
「それしかないのう」
こう話してそしてだった、家康は難しい顔でいた。そして彼の危惧は残念ながら当たった。数日後に届いた文を見てだった。
家康は駿府にいる者達に苦い顔で告げた。
「戦を覚悟していよ」
「まさか大坂で動きが」
「それがありましたか」
「左様ですか」
「うむ、修理が何者かに襲われた」
家康が危惧していたこのことがというのだ。
「傷を負った、命に別状はないが」
「襲われたとなると」
「もうそれで、ですな」
「事態は終わりですな」
「最早これで」
「そうじゃ、講和の話は吹き飛ぶわ」
それを進めていた大野がそうなってしまい彼の下にいる大坂の講和派が力を失ってしまってというのだ。
「完全にな」
「だからですか」
「戦の用意ですか」
「それを進めますか」
「今から」
「浪人衆は大坂が出さぬ」
家康はまずはこのことから話した。
「そして茶々殿もじゃ」
「大坂に留まり」
「右大臣殿もですか」
「あの方も」
「戦を決意するわ」
ことここに至ってはとなってというのだ。
「もう仕方がない、ではな」
「戦の用意をし」
「大坂で動きがあればですか」
「出兵ですな」
「大坂まで」
「そうする、江戸にも伝えよ」
即ち秀忠と彼の下にいる者達にというのだ。
「もう戦は避けられぬわ」
「しかしですな」
ここで柳生が家康に聞いてきた。
「今に至っても」
「うむ、右大臣殿はな」
「お命をですか」
「奪うつもりはない、太閤殿もそうしてきた」
敵だった者を許してきたというのだ、北条家にしても北条氏政は命を助けられそうして高野山に入れられている。
「ならばわしもじゃ」
「右大臣殿のお命は」
「奪うことはせぬ」
柳生にはっきりとした声で答えた。
「最悪でも高野山に蟄居でな」
「許されますか」
「そうして暫くして蟄居を解いてな」
「あらためてですな」
「大名に戻す、それでよいわ」
「では千様も」
「夫婦のままじゃ」
このことについても言う家康だった。
「その様にするぞ」
「それではその様に」
「では戦の用意をせよ」
あらためて告げてだった、家康は出兵の用意を命じ江戸にもそれを伝えた。当然それは諸藩にも伝えられた。
景勝はその命を受けて景勝に言った。
「いよいよな」
「豊臣家がですな」
「終わる時が来た」
「左様ですか」
「大野修理殿が襲われてな」
「講和の流れが潰えましたな」
「そうしてな」
そのうえでというのだ。
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