巻ノ百三十五 苦しい断その二
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「その者達に護らせておる、そして鋭い」
「それで、ですな」
「忍の者をつけても」
「気付かれて」
「帰されますな」
「その辺りはしっかりしておる」
大野という者はというのだ。
「それでじゃ」
「身の回りのことは」
「修理殿次第ですか」
「あの御仁の家臣の者達次第」
「そうなりますか」
「いや、襲われただけでじゃ」
その時点でというのだ。
「修理は怪我を受けたなら茶々殿の説得も出来なくなり怪我の手当で引っ込んでいる間にな」
「戦をしようという者達が力を増し」
「そうしてですな」
「そしてそのうえで」
「戦に向かいますか」
「そうなる、だから襲われただけで終わる」
今の講和の流れがというのだ。
「だから出来ればな」
「修理殿が襲われる前に」
「襲われない様にしておくべきですか」
「だから伊賀者でも甲賀者でも」
「送りたいですか」
「そうしたい、しかし修理は幕府の頼みは受けぬ」
あくまで豊臣家の家臣だからだ、茶々を止めることは出来ないがその忠義については誰もが認めるものだ。
「決してな」
「密かに送ろうにも」
「大坂城においてそうしては」
「気付かれますな」
「特に真田家の者達に」
「十勇士がおる」
家康も彼等のことは頭の中に入れている、まさに一騎当千の者達として。
「気付かぬ筈がない、だから修理に話してな」
「そうしてですな」
「修理殿の周りに公然と置きたい」
「しかしそれは出来ぬ」
「どうしてもですな」
「そうじゃ、確かに修理も己の家臣達に護られておるが」
それでもというのだ。
「それで足りぬかも知れぬ」
「だからですな」
「ここはですな」
「助っ人を送りたい」
「それが本音ですが」
「それが出来ぬな」
苦い顔で言う家康だった。
「困ったことじゃ」
「そういえばです」
ここで正純が家康に話した。
「修理殿は今上の弟の主馬殿とです」
「反目しておるな」
「主馬殿が怒られています」
講和、そして城が裸城になってしまったことについてだ。
「主馬殿は激情家、それ故に」
「余計にじゃな」
「兄君である修理殿を憎んでおられ」
「何をしてもおかしくないか」
「刺客を送る位は」
「するな」
「はい、それで修理殿が襲われれば」
殺されずとも傷を受けずともそれだけでというのだ。
「確かに講和は遠のきますな」
「そうなるな」
「浪人達を大坂から出すことも茶々殿の江戸入りも右大臣殿転封も」
「その全てが潰れる」
「そして戦になりまする」
「だからわしも思うのじゃ」
それも強くとだ、家康は正純に答えた。
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