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ドリトル先生と和歌山の海と山
第六幕その十

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「日本的ですね」
「日本人は負けた側にも優しいからね」
「はい、幸村さんだけでなくて義経さんも」
「頼朝さんに追われて自害した」
「あの人にも優しいね」
「楠木正成さんにも」
「そこも日本人だね、勝った人を褒め称えるけれど」 
 それと共になのです。
「負けた人にもね」
「慈しみを忘れずに」
「いいとろを見て」
 そうしてなのです。
「褒め称えるんだよ」
「そうした人達ですね」
「負けた人もヒーローなんだ」
 日本ではそうなのです。
「必死に、何かの為に戦った人は」
「英雄なんだ」
 本当にというのです。
「敗れて死んでもね」
「讃えられるんですね」
「そうなんだ、幸村さんみたいにね」
「そう思うと日本人の心を見た気がします」
 王子は遠い目になりました、幸村さんが住んでいたというその場所を見ながら。何百年も前に幸村さんは確かにそこにいました。
「その一面を」
「僕もだよ、負けてもね」
「それでもですよね」
「うん、見るべきものを見てね」
「そのことを忘れないんですね」
「日本人はね」
「それで幸村さんも今も讃えられているんですね」
 トミーだけでなく皆がその幸村さんがいた場所を見ています。
「英雄、ヒーローとして」
「そうなるよ、本当に幸村さんはね」
「日本人のヒーローですね」
「タイプは違うけれど信長さんと同じくね」
 まさにというのです。
「そうなんだよ」
「そうだね、けれどね」
「けれど?」
「いや、一つ思うことは」
 それはといいますと。
「幸村さんが活躍した時期自体はね」
「長野で戦っていてもですね」
「本当の力を発揮したのは大坂の陣だから」 
 この時だったというのです。
「短いね」
「あっ、確かにね」
「結局大坂の陣の人だよね」
「その時だけだね」
「そう思うと活躍した時期は短いね」
「一瞬だけだったね」
 動物の皆もこのことに気付きました。
「幸村さんは」
「結局ね」
「活躍の時期自体は短くて」
「あっという間だったわ」
「流星みたいに出て消えて」
「けれどその一瞬の輝きが凄かったのね」
「何しろ家康さんをあと一歩まで追い詰めたからね」
 大坂の陣の最後の戦いでそうしたのです。
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