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越奥街道一軒茶屋
欲深
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 匂いでわかったんですかねぇ。盆を持ってあっしが出ていくと、旦那はうれしそうに話かけてきた。中々明るくて、気前の良さそうなお人でしたねぇ。

 その後は、普段他のお客さんにしてるみてぇに、旦那と暫く話してやした。口数も多い旦那だったんで、中々楽しかった。

 そうこうしてると、突然背後に誰かの気配を感じたんでさぁ。
 驚きやしたね。道を歩いてくるのには気が付かなかった。
 褐鴉の旦那が降りてくるはずもねぇですし、誰かと思って振り向くと、なんとそこには棺運びの莞柳の旦那が立ってたんでさぁ。

「莞柳の旦那じゃねぇですか!」

 あっしは驚いて声をかけたんですがね、旦那はどういう訳か怖い顔をしたまま立ちすくんでる。
 何があったのかと声をかけようとしたんですがね、そん時気づいたんですよ。旦那は盲目の旦那を睨んでるんでさぁ。

「どうしましたか」

 盲目の旦那が、様子が変わったのに気づいて声をかけてきやした。
 それに答えたのは、莞柳の旦那でした。

「てめえ、この前俺が運んだろ」

「そ、それってどういうことですかい?」

 あっしは慌てて言いやした。
 旦那が運んだなんて言うのは、死体くらい。つまり――。

「私がバケモノだと」

 そうなりやす。
 ……って?!

――

 盲目の旦那は、まさかのバケモノでした。もう驚きしかねぇです。
 正体がバレた旦那は、自分の掌をあっしに見せたんですがね、なんとそこには手が。旦那曰く、ちゃんと見えてるらしいんでさぁ。

 そしてその後旦那は自分の事を話やした。
 旦那は元も旅する盲目の坊主で、その道中盗賊に襲われて殺されちまったらしいんでさぁ。その死体を偶然莞柳の旦那が見つけて、埋葬できるとこに運んだと。

「ただの野垂れ死にかと思ったが、まさか殺されてたとは……。挙句迷わせるなんざ、棺運びの名折れだな」

 莞柳の旦那は、ちょいと悔しそうにいいやした。
 すると盲目の旦那は、手の目を莞柳の旦那に向けたんでさぁ。

「お前は金をもらっていたな。金を奪われ、みじめに殺された俺を出汁に」

 さっきまでとは打って変わって、盲目の旦那は敵意むき出しの、攻撃的な口調と態度をしていやす。
 莞柳の旦那、売り言葉に買い言葉って感じで、剣呑な目をしやした。

「それが俺の仕事だ。何が悪い」

「ちょっと……」

 何でここで険悪な雰囲気になるのかがさっぱりわかりやせん。盲目の旦那が不自然に突っかかってるんでこうなってるんですが……。

「あー、それ以上いくと不味そうだからもう俺様が処理するぞ」

 突然上から声がしやした。
 見上げると、案の定褐鴉の旦那がいやす。
 あっし以外の人が呆気に取られてる間に、旦那は盲目
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