暁 〜小説投稿サイト〜
楽園の御業を使う者
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質葉家の前の二台のコミューター。

「では後程」

水波が1台に乗り、白夜と真夜がもう1台に乗り込む。

「うふふ…二人っきりね」

「えぁ? そうですね」

白夜の隣に座った真夜が微笑んだ。

肉体の若さからくる可憐さと、実年齢がもたらす深い妖艶さの入り交じった微笑み。

白夜はなんとなく、顔をそらしてしまう。

そのまま真夜の方へはむかず、窓の外を眺めている。

「白夜君。九校戦は初めて?」

「そ、そうですね」

「競技内容は知っているかしら?」

「スピードシューティング。クラウドボール。
バトルボード。アイスピラーズブレイク。
ミラージバット。モノリスコード。
今年はこの6つですよね」

「ええ、そうよ」

他にも競技はあるが、今年はその六つだ。

「白夜君はどの競技に興味があるのかしら?」

白夜は観るよりも実際にやりたい人間だ。

「あえて言うならミラージバットと女子バトルボードですかね。
知り合い…というかウチの門下生が出るんですよ」

「だれかしら?」

「渡辺摩利。かの渡辺家の一人娘ですよ」

白夜は知り合いが出るから、程度にしか思っていなかったが、真夜は別だった。

水波から送られてきた情報。

その中でも最も重要度の高い物。

白夜に好意を寄せている者のリストだ。

リストの中で、真夜が警戒している相手。

それが渡辺摩利だ。

百家ではないとはいえ、その家柄もよく、白夜と釣り合いうる相手。

「渡辺摩利…ね…」

「青田買いですか?」

「ええ、そんな所よ。時間があれば会ってみたいわね」

「あとでメールしときますよ」

「……仲がいいの?」

「あの人家の兄が好きらしいんですよ。
その関係でよく恋愛相談されるんですよ」

「そう…恋愛相談…」

無論真夜はその『恋愛相談』についても、その本来の目的をきかされていた。

「白夜君には、好きな人はいないのかしら?」

真夜に問われた瞬間、白夜は顔が赤くなったのを自覚した。

赤髪に映える白い肌が赤くなっているのを真夜は見逃さなかった

「顔、赤くなってるわ」

「いいじゃないですか…好きな人くらいいても…」

「若さって羨ましいわ」

真夜がクスクスと口元を押さえて笑う。

「真夜さんだって十分若いですよ」

「ええ、体は若いわ。でもね、精神はそうもいかないのよ」

「くくっ…」

白夜の返答は笑いだった。

窓の外を見ていた目を、真夜に向ける。

「真夜さんって心も若い…いえ、子供っぽいですよ」

「そうかしら?」

「ええ、だって今、家出中でしょう?」

真夜はきょとんとした
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