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SAO -Across the another world-
五話 矛盾の予兆
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それをデスクの上に起き、中身を検分し始める。
「あった。これだ」
資料に付けられたタイトルは先ほどの表と同じ「サーバー保守予算表」、ただしこちらは項目ごとに予算が記されているだけで、表で表されてはいない。
その紙の上に人差し指を這わせ、件の項目を探し続ける。序列五位、三千万、法人レンタル.....。しかしその条件が一致した項目は、いくら探しても見つからない。
「法人レンタルの項目はあるけど.....予算は表に記されている三分の一以下だよ」
「警備費用の項目も、表のものとは大分金額が違いますね」
「つまり、松川部長の資料とお前に渡されたコピーとは何かが違うという事か」
「うーん.....でも腑に落ちないな.....」
「どういう事ですか?」
「この資料を私に渡したのは確かに松川だけど、作ったのはこの研究室の人間じゃ無いと思うんだ」
「どうして思うんだ、園原?」
「いや、ここの部署さ、あくまでもALOの運営とVR技術の研究をメインにしてるからいくら管理職でも事務仕事をする余裕なんか無いんだよね。でも機材調達とかそういう類いの資料作成はしたりするから、無いとは言い切れないけど。しかも今回みたいな大量のプリントをコピーしたとなると必ず人目に付くと思うんだ。でもここ最近研究室に籠ってたけど一度もそんな所を見たことが無いし」
「じゃあ、誰がこの資料の数値を改竄したって言うんだ?」
「恐らくだけど、この研究室より上位にある部署の誰か.....」
「ここより上位....研究部門のティアトップには、社内中枢部に何かしらの繋がりを持った役員が多いですから」
三矢が苦々しい顔で呟く。案外、大人しそうに見える彼女も上の文句の一つくらいは言えるらしい。
「改竄した目的って何だろう」
「資金の横流しか横領、それか極秘事業の資金調達とかじゃないかと思う。ここは赤字企業じゃないから、水増しして何か金に色が付くわけでもないしな」
「なんでそんなのがこっちに回ってくるかなぁ.....」
「当たっちまった物は仕方が無い。取り敢えず、松川部長が帰ってきたら俺に連絡を入れろ。これの事について聞いてみる。お前は散らけた書類の後片付けでもしてろ」
それだけ言い残すと、正田は三矢を従えて研究室を出ていった。再び残されたのは、園原一人だけである。
そして正田に指示された通りに、松川の机にばらまいた書類を元通りにするため、机上のプリントをかき集め始めた。
「全く....誰がやったのやら....」
園原の呟きは誰に聞かれる訳でも無く、ただ虚空に浮くだけのものであった。
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