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SAO -Across the another world-
五話 矛盾の予兆
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しかも苦労人である彼は、トントン拍子で出世してきた園原を快く思ってはいない。留守番を命じられたのは本社の意向だが、それに松川は最後まで反対していたらしい。それは、専門分野でないこの研究室を上手く纏めることが出来ていない松川が抱えている不安の現れであった。
目的のデータを証拠を残さずダミーデータに置き換えることは、園原にとって容易い作業だ。しっかりと用意周到に隠蔽工作もしている。だが、園原には不安要素が無い訳ではない。問題は、部長に付き従う研究員達である。いくら松川が営業畑出身の、コンピューターやプログラミングの専門知識が無かろうとも、その部下達にその手の知識があれば話は違う。専門技術を持っている研究員であるのなら、今園原が置き換えているデータを見れば、一瞬で異変に気付くだろう。気付かれてしまえば、上層部まで話が行ってしまい、この事件の元凶が有耶無耶になってしまうかもしれない。園原は一技術者として、物事をはっきりさせなければ納得しない性分であった。だから、今回の事件の首謀者についても徹底的に洗い出し、始末を付けさせるつもりである。
ダミーデータを置き換える作業が終了したのは、作業開始から約八時間が経過した午後一時の事である。基礎データベースのセキュリティ解除やら膨大なファイルのコピーに時間が掛かったのが原因で、予定では五時間で終わらせる筈が、プラス三時間と大幅に遅れてしまった。
途中で昼休憩も挟みつつの作業であったのだが、こうも遅れては本来処理してなければならない仕事の方に支障が出てしまう。ええい面倒臭い、と園原は机上のファイルを手に取ると、用紙を一枚一枚検分し始めた。内容はALOサーバーの保守点検についてのレポートで、これを渡してきた松川からは要点を纏めたレジュメを作成し、今日の十七時までに提出してほしい、との依頼が来ていた。
レポートファイルの分厚さはちょっとした冒険小説くらいにはあり、しかもA4サイズの紙一杯に文字があるというのだから気は滅入る。別に速読術に精通している訳でも無いから、これを読んで要点を纏めろというのは今の園原にとっては酷であった。
壁に掛けてあるデジタル時計の液晶が示す残り時間は四時間。一分一秒が惜しい、と園原は慌ててファイルの表紙を捲った。
「....ん?」
違和感に気が付いたのは、A4紙の右下にあった、Excelで作ったのであろう関数表を何気無く見た時であった。表のタイトルは「サーバー保守予算表」、内容は表題通り、レクトが保有しているネットワークサーバーの保守予算についてである。上から予算の高い順に並び、一番上が会社内のあらゆるデータを一括にして保管するサーバーで、本体はこの本社の地下に設置されている物だ。
そしてその次の項目が、違和感の正体であった。項目の名前は「VR系サ
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