第五十二話 水の都その十
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「だからな」
「それでか」
「ああ、だからな」
「ワインか」
「そうだよ、ワインだよ」
久志に笑いながら話した。
「これを飲まないとな」
「駄目か」
「ああ、じゃあな」
「ワイン飲むな」
「そうするな」
久志は親父に笑って答えた、そうしてだった。
親父に舟賃、八人分と言われたが九人分払ってだった。陸地に上がってそうしてこう言ったのだった。
「じゃあ今から行くな」
「ああ、しかしな」
「舟賃か」
「あと一人分はあれか」
「ああ、チップってことでな」
「わかってるな、荷物賃だけじゃなくてか」
「それもだよ」
チップもというのだ。
「もう一人分はな」
「出してくれたんだな」
「取っておいてくれよ」
「渡された金は受け取るのが礼儀だろ」
それだと返した親父だった。
「そうだろ」
「ああ、それがこの島だよな」
「東の島は違うけれどな」
「あそこはな」
それは久志も聞いていた、東の島は日本と非常によく似ている。日本ではチップの風習はないからだ。
「それはないな」
「そうだけれどな」
「この島は違うからな」
「多く渡してもらったなら」
チップとしてだ。
「受け取るからな」
「そうだよな」
「ああ、ただ有り難うとは言わせてもらうぜ」
洒落た口髭のその顔で笑って言う親父だった。
「また機会があったらな」
「頼むぜ」
「俺の舟に乗ってくれよ」
親父は久志に笑顔で話した、そうしてだった。
一行はその店に入りパスタや海の幸を中心に料理を頼んだ、シーフードサラダにパスタにカルパッチョ、それにアヒージョ等をだった。
全部頼んだ、勿論ワインもだ。
それからだ、久志は出された料理とワイン達を見て唸った。
「親父の言う通りだな」
「はい、そうですね」
「見事でござる」
順一と進太が応えた。
「見るだけで、でござる」
「美味しそうですね」
「そうだな、本当にな」
久志はその料理達も見つつさらに言った。
「これは美味そうだな、パスタもな」
「シーフードのマカロニにでござる」
「渡り蟹とトマトのスパゲティですが」
進太も順一も言う。
「どちらもです」
「実にいいです」
「そうだよな、じゃあな」
「今から」
「食べるでござる」
他の面々も入れてだ、フォークやスプーンを手に取ってだった。
その料理達を食べはじめた、そしてだった。まずは久志が言った。
「美味いな」
「うん、これはね」
「凄いね」
今度は源三と剛が応えた。
「カルパッチョもアヒージョも」
「全部美味しいよ」
「オリーブでお野菜と一緒に煮たのもね」
「こちらも美味しいよ」
「そうだよな、全部な」
久志はそうしたものも食べつつ言った。
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