第五十二話 水の都その七
[8]前話 [2]次話
「期待させてもらうぜ」
「そうか、じゃあな」
「頑張るんだな」
「期待に添える様にな」
久志は親父に笑って話した、そしてだった。
一行は舟でヴェネツィアの各地を回っていった、そうしていってだった。彼等は舟の上から寺院や市庁等街の重要な建物、歌劇場や豪商達の屋敷達を見ていった。そうしてその中でだ。
ヴェネツィアの最も大きな歌劇場の正面の運河を透ったところでだ、源三は目を瞠ってこんなことを言った。
「うわ、大きいね」
「建物自体もな」
正も言う。
「立派だな」
「大理石造りでね」
「入り口はあれだな」
石柱が並び見事な階段があるそこを見てのことだたt。
「神殿みたいだな」
「そうだよね」
「如何にも歌劇場って感じだな」
「歌劇を上演する」
「ああ、あの中に入ったらな」
「立派な舞台を見られそうだね」
源三は正に歌劇場を見ながら話した。
「そうだね」
「そうだよな、ただな」
「ただ?」
「いや、この世界どんな歌劇があるんだろうな」
正はこのことを考えた。
「一体な」
「それね、どうなんだろうね」
「俺の彼女の姉ちゃんが歌劇好きでな」
正は彼等が起きている世界のことをここで話した。
「詳しくてな」
「それで教えてもらったんだ」
「ああ、彼女も姉ちゃんの影響で詳しくてな」
つまり二人から聞いたというのだ。
「ヴェルディとかプッチーニとか聴いたぜ」
「歌劇自体もなんだ」
「ロッシーニとかベルリーニもな」
「そうだったんだ」
「ドイツの方もな」
この国の歌劇もというのだ。
「聴いたぜ。ワーグナーとかな」
「ワーグナーまでなんだ」
「それでどんな歌劇やってるかってな」
この世界ではというのだ。
「気になったんだけれどな」
「今はあれだな」
ここでまた親父が話してくれた。
「ヘラクレスだな」
「ヘラクレスっていうと」
その名前を聞いてだ、源三は親父に聞き返した。ゴンドラは今も運河を進み一行に正面からの歌劇場を見せている。
「あの十二の試練の」
「ああ、ヒュドラーとか倒したな」
「その英雄だよね」
「その話をしてるな」
今現在はというのだ。
「確かな」
「そうなんだ」
「ヘラクレスが死ぬ時だ」
歌劇の物語になっている部分はというのだ。
「奥さんとまあ色々あってな」
「確か毒でだったね」
「物語の中じゃ毒を自分で飲むんだよ」
歌劇の中ではというのだ、歌劇のストーリーと原作である神話のそれが異なることはよくあることだ。
「そうして死ぬんだよ」
「そうなんだ」
「それまでに色々あってな」
「奥さんがケンタウロスに襲われるとか?」
「いや、そこは違うけれどな」
原作である神話とはだ。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ