第六十三話
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、この劣悪な環境を改善することを言い渡された。まずは『安心して休める場所』と『美味しい食事』を整える。今日皆に与えた指令にはそんな意味があった。」
奴のせいで二階に行けないけどと、悪態をつく拓海さん。後で○ルサンしないとなぁ。
「だから、食べろ。美味しいものを倒れるほど食べろ。そして寝ろ。安心して泥のように寝ろ。これからの話は、その後だ。」
拓海さんの言葉に、皆は戸惑っていた。前の提督とのギャップに驚いてるのか、拓海さんが信じられないのかは分からないが、誰もカレーに手をつけようとしていなかった。
私は夕立ちゃんや千尋さんと目を合わせる。私達は、自分達が最初に食べようかと考えていた。そうでもしないと、この人たちは食べないだろう…………と、思っていた。
「頂きます。」
やけにハッキリと聞こえたその声の主は、入り口からすぐのところに座っていた、若葉ちゃんだった。
彼女は目の前には置かれていたスプーンを手に取ると、そのままカレーを口の中に運んだ。
モグモグと口を動かす若葉ちゃん。唖然とする私達。興味深そうに見ている千尋さんと拓海さん。
「…………木曾、なかなか旨いぞ。」
若葉ちゃんは千尋さんを見ると、少しだけ笑った。
「おう、ありがとな。さ、皆も食べてくれ!」
千尋さんは若葉ちゃんに向けてニヤリと笑うと、私達を一望した。
すると、皆恐る恐るといった感じでスプーンを手に取り始める。口々に小さく「頂きます」と言うと、それぞれカレーを口に運び始める。私や夕立ちゃんもそれを見て、カレーを食べ始める。様々な香辛料から産み出された辛さと香りが口の中一杯に広がり、少し大きめに切られた具材がホロリと崩れていった。
要するに、美味しい。
私はひと口食べた後で、回りを見渡した。
佐世保の皆は、泣きながらカレーを口に運んでいた。
皆、久しぶりにまともなものを食べたのだろう。誰もその涙を拭うこと無く、ただ目の前のカレーを食べていた。
恐らく、ここに来てから始めての『人間扱い』だったのだろう。
私はその光景を見て、涙が出てきてしまった。
この人たちが今までどんな生活をしてきたのか、想像の範囲でしかない。
しかし、この光景を見ると皆がどれだけ劣悪な環境で生活してたのか、伝わってきた気がした。思わず、涙が溢れた。
すると、誰かに頭を優しく撫でられた。
「ほら、お前もしっかり食え。」
千尋さんは私の頭から手を離すと、私の
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