第六十三話
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流石にこれは使えねぇや。」
千尋さんはこちらを向いて手にもった包丁を見せてきた。錆びたり欠けたり曲がったりしてて、確かに使えそうになかった。
あれ、それじゃあどうやって材料を切ったんだ?
「春雨ー。皿に盛るから手伝ってくれー。」
軽く微笑みながら私を呼ぶ千尋さん。その若干ぎこちない笑顔が、彼が意識して人付き合いを頑張ってるのだという印象を受ける。悠人さんは、「アイツは俺と拓海以外の友達らしい友達は殆ど居ないなぁ。」と言ってた。
女の子だらけの中に入っていったから、色々気を使わせてるのだろう。
「はーい。」
だから、私はそれを指摘しない。立ち上がると、カウンターの向こう側に移動する。
すると、千尋さんは私にしゃもじを渡してきた。千尋さんはお玉を持っていた。目の前にはほっかほかのご飯に、大きめに切られた具材がゴロゴロ入っているカレー。更には黄金色に揚がっているとんかつ。
「結局、牛と鳥と豚を全部使うことにしたよ。んじゃ、全部で十五人分入れてくぞ。」
「待って、サラリと僕の分を抜かないで。」
私は千尋さんと拓海さんのやり取りにクスリと笑った後、皿にご飯を盛り始める。
作業を始めて数分、私達は十六人分のカレーととんかつを皿に盛り付け、皆の前に運んだ。
「あの…………えっと、なんでですか?」
すると、一人の軽巡が手を挙げた。たしか、五十鈴さんだったはず。
「私達の食事はこれなのですが、なんで私達にこの様なものを?」
五十鈴さんはそう言いながら、懐からカロリーメイクを取り出す。どうやら、昼間に拓海さんが言ってたことは本当だったらしい。
「そりゃあ、権利だからだよ。」
拓海さんは少しだけ笑ってそう言った。その言葉に、佐世保の皆は首をかしげた。
「千尋、僕達に与えられる権利二つ、ちゃんと言える?」
拓海さんは千尋さんに話を振る。千尋さんはそれに対して顔をしかめた。少なくとも、私や夕立ちゃんは呉の提督からその話は何回かされたことがあるけど、千尋さんは知ってるのかな?
「あ?三つじゃねぇんだ。えっと、『旨いもんを腹一杯食う権利』と『安心できるところでぐっすり寝る権利』だろ?」
少し気になることも言ってたが、千尋さんは私達が聞いたものと同じことを答えた。
「うん、正解だ。はっきり言って、君達が置かれている環境はおかしい。ろくにご飯も食べれず、寝るときは一ヶ所で雑魚寝。まともに補給もされずに、ボロ雑巾のように捨てられる。そんなんじゃ、戦果を挙げることも無理だろう。」
拓海さんの言葉はかなりキツい印象を受けた。ここの前の提督を罵ってるようにも見えた。
「僕がここの所属を元帥から受けたとき
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