第六幕その三
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「日本が好きで憧れるあまりかね」
「切腹してだったんだ」
「自殺したんだ」
「そうして人生を終えたんだ」
「普通ドイツ軍人は拳銃だけれどね」
これを使って自殺をするというのです。
「毒を飲んでも駄目でね」
「それで最後は」
「切腹したんだ」
「日本刀で」
「そうしたの」
「そうだよ、そして見事ね」
まさにというのです。
「その人生を終えたんだ」
「日本の武士の死に方なんだ」
「華なのかな、やっぱり」
「最後の最後の意地?」
「それもあるのかな」
「何か文献を読んで理由は読めるけれど」
それでもと言う先生でした。
「理解出来るかっていうとね」
「それはだよね」
「難しいよね」
「何で切腹するのか」
「そこに美学があるのか」
「わからないね」
「さっき横三段の切腹が出たけれどね」
先生は皆にこの切り方のお話もしました。
「これは武市半平太さんだね」
「ああ、幕末の」
「坂本龍馬さんのお友達だった」
「あの人がそうしたんだ」
「横三段の切腹をしたんだ」
「これはそれまで誰も出来なかったらしいんだ」
この横三段の切腹はというのです。
「三段切る前に果ててしまってね」
「死んでしまって」
「それでなんだ」
「誰も出来なかったんだ」
「横三段の切腹は」
「そうだったんだ、けれど武市半平太さんはそれを果たしてね」
それまで誰も出来なかったのに、というのです。
「死んだんだ」
「それで称賛されたんだ」
「見事三段の切腹を果たしたって」
「そう言われたんだ」
「武士として立派だってね」
まさにそう言われたというのです。
「そのことでも知られたんだ」
「ううん、凄いことは凄いけれど」
「悲しいね」
「切腹して死んだんだし」
「そこで意地を見せてもね」
「称賛されてもね」
「そうだね、けれど見事果ててね」
そうしてというのです。
「名を残したからね」
「そのことはなんだ」
「やっぱり凄いんだ」
「そうなんだ」
「そのことは」
「そうだよ、多分この感覚は日本人ならね」
日本に生まれて日本で育ってきた人達ならというのです。
「僕達よりずっとよくわかる筈だよ」
「日本でのことだから」
「それでなのね」
「よくわかるのね」
「どうして切腹に華があるのか」
「そのこともね」
「日本人ならね」
またこう言う先生でした。
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