第3章 リーザス陥落
第109話 魔人アイゼルの願い
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か無いかくらいわかる。……その一欠けらも無い者に警戒する必要などない」
「ふっ……、そう、かもしれませんね」
アイゼルは、使徒達の傍へと行き ひとりひとりの頬を撫でた。その後ユーリを見る。
「率直な、……正直な気持ちを、貴方に伝えましょう」
「……ああ」
「今の私は、貴方達と共闘をしたい、と考えてます。サテラも同意見だと思われます。口では認めないかもしれませんが」
まさかのアイゼルからの申し出だった。魔人が味方に付けば 心強いどころではない。歴代において、魔人と人間の共闘はあり得なかった。歴史的瞬間とも言える光景だ。
だが、それが無理だと言う事はユーリも判っていた。
「ノスのこの凶行。……私に断りもなく私の使徒を使い、そして あわよくば葬ろうとしたこと。私の使徒が死んでも良し。貴方達が死ねば尚良し。その構えだったんでしょう。……あの男は 先代魔王ガイに繋がる者を、少しでも繋がる者を心底憎んでいます。今までは、ジル様…… 魔王ジルを復活させるまでは 使える駒として見て、それが叶えば、1000年も恨みつらみを重ねた憎悪を、ぶつける。………私は見誤っていました。本質を」
「だろうな。……ジルへの狂信は あれだけだがオレも見ていてよく判った。並大抵じゃない」
人間であれば10回ほどは人生が終わる期間の間、ずっと押し殺してきた感情だ。どす黒い物がノスの中に渦巻いている事くらい想像がついていた。
「私の気持ちは それです。ですが……それもこの先 私にはもう命が無いのですから…… そう安易に手を伸ばしてしまったのかもしれませんね」
自虐的に笑うアイゼル。
人間に付く――などと、普通は考えない。考える訳がない。今は特別。
そう言っている様だった。アイゼルは、今の現状。人側についても このまま魔人側にいても、どちらを選んでも死ぬのであれば、最後は抗いたい、と言う思いから人間側に付く結果になった。ただそれだけなのだ。ホーネットを否定するノスの傍にはいられない、と思ったのが一番だろう。
そして 人側に付こうがそのままでいようが結果は変わらないのはユーリにも判っていた。
「魔王に牙をむく事は出来ない。……だろ?」
「……………はい。その通りです。魔王との血の契約は、想像を絶する程に重い。ジルは魔王としての血を殆ど失っている筈なのに、私は歯向かう事が出来ません。ジルが『首を落とせ』と命令を下せば、それだけで私はそのまま命を絶つでしょう」
「……………」
「ふ……、私は醜いと思っていた人間達の中に見た光を。貴方達の傍でそれを感じ、死に向かいたい、と思っているのです。共闘をしたい……と言いましたが、実際には恐らく共に戦う事は出来ないでしょう。魔王がいる限り、私は無力です。……
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