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SAO -Across the another world-
二話 戦乙女の失踪
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得られていないらしい。事件の首謀者である茅場ももうこの世には居ない為、誰もサーバー内部のブラックボックスを覗く事は出来ないかもしれない。

ユーリはSAO事件発生時から都内の私立病院に入院しており(SAOプレイヤーは行政府が保護して全員入院措置が取られた)、牧田は帰還後にそこへ訪れた事があった。東京の中心部にある、大きな大学病院の入院病棟の五階。消毒の香りから感じられる清潔感が漂う、白いリノリウム張りの床が長く伸びる廊下を進んだ先にある四人一部屋の病室に、彼女の身体はあった。

透き通る様なノルディックブロンドのショートカットに、雪を思い出させる様な、真っ白な肌をした顔。前者はイギリスの、後者はロシアの血を引いたのだろう。細い首から下はジェル素材の特殊なカバーに包まれており、そこから先を伺う事は出来ないが、明らかに痩せ細っているであろう事は、自分や栗原の帰還後の経験で察する事が出来た。二年近く筋肉を動かしていない上に、栄養は全て点滴頼りだ。元から線が細い栗原の帰還直後の姿は、見ていて痛々しい物があった。

病床で横たわるユーリの顔には、SAOの最前線で常日頃から目にした、戦乙女(ヴァルキリー)と称される程の勇猛さは微塵も感じず、単なるか弱い少女としか見ることが出来なかった。あまりにもかけ離れたユーリの姿に困惑を覚えた牧田は、その時から「ユーリと再会したい」という強い気持ちを持ち始めた。

「無事なら良いんですけど....何の手掛かりも無いってニュースで言ってましたからね....」

「暗い事言うなよ。俺は栗原と再会できただけでも嬉しいよ」

他人に語るほど面白くもないが、多少数奇な人生を辿っている自分にとっては、幼馴染という関係を持てる喜びを半ば本心でその言葉を言ったのだが、スピーカーからは「からかわないでくださいよ。牧田君らしくもない」と至って冷静な反応が帰ってきた。

昔はこんな性格じゃなかったのになぁ...、と牧田はそう遠くない昔の思い出を掘り返した。

数奇な運命ととある事情で幼少期から施設に保護され、そこで育った自分は、七歳の時に牧田家に引き取られ、そこで「牧田」の名字と、「玲」という名前を与えられた。それまでは名前も無く、ただ男という性別と体の大きさ、そして手の甲に残る傷跡が識別の目印になっていた。

東京の東大和市にある牧田家は、特に何の特徴も無い普通の核家族世帯であった。父親の尚治は国土交通省に勤務、母親の燿子は大手広告代理店で勤務しており、その二人の間には子供は居ない。施設から夫婦に引き取られて牧田家の人間として生活している子供は自分の他に一人いる。自分より3歳年下の妹、凛が、戸籍上では実妹として居る。彼女も元は施設の出身であり、自分と同じタイミングで牧田家に引き取られたらしい。養護施設の場所は違えども
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