生存戦 2
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は、相手の意表を突く奇策が重要。三属攻性呪文は直接的な攻撃力に優れますが、【トライ・バニッシュ】、【トライ・レジスト】などのほか、対魔術用の防具もあり、対抗手段も多く決定打になりにくい。奇をてらう――奇策もまた兵法であり魔術師の持つ知恵の力です」
「このストリックランドに魔導戦術論と魔術戦教練を説くつもりか。魔術師の強さ≠ニは小賢しい真似をせずに純粋な魔力と魔術でもって敵を粉砕することこそ至上。悪知恵を働かせて勝ちを拾うなど、下の下の下策!」
「ははぁ、まるで魔術を戦闘で使うことしか考えてないかのような物言いですね」
「いかにも。知識の守護者としての魔術師などもう古い。これからはマキシム主義の時代だ」
「マキシム主義?」
「そうだ。魔術の持つ戦闘能力を特化し磨き上げるため、魔術師としての武力に直結しない雑多な学問を排除し、戦う力のみを追求する、マキシム=ティラーノ氏の提唱する純粋真理だ! 学生の身分で知識だなんだと多くを求めるのは無駄で無意味。そのようなことで国家に貢献できようものか」
「なんと短絡的な。魔術は純粋な力のひとつであり、暴力の手段として軽々しくあつかうものではない。世界を形作り命の創造と破壊をおこなうものであり、敬意を払い研究しつつ、忌避することなく学び、実践するもの。そもそも近代魔術にふくまれる自然理学や占星術学、錬金術に魔術史学、魔導地質学、数秘術、魔導考古学、法医術――それら数多の学問はすべて智の結晶。人が生き残るための力そのもの――」
魔術というのは様々な方向に対して奥が深く、幅が広い。魔術による戦闘ひとつにしても、必要とされる才能は、極めて多岐にわたり、どのような技術、知識、才能でも力となる――。
知は力、知識は武器なり。
だが秋芳のこの持論は他の多くの魔術師たちがそうであったように、ストリックランドにも理解されなかった。
「魔術師にあるまじき狡猾邪道な手品を披露したと思ったら、次はあやしげな言説で世の人々を惑わすつもりか」
「そんなつもりは毛頭ない。あなたはいささか偏った考えを持っているようだが、少し時間をいただければ蜂蜜酒とキッシュを食べながらででも。俺の考えを聞いて、理解してもらえるはずだ」
「私は酒なんて飲まない」
「では、お茶とクッキーでも」
「カフェインと砂糖は体に悪いのでひかえている」
「たいした禁欲主義者ですね、俺には真似できない。まるでヒトラーのようだ」
「ヒトラー? そいつはなに者だ」
「極貧の出自にもかかわらず 独学で教養を身につけて役人になり、国の頂点に立つほど出世をして、厳格だが裕福な家庭を築き上げた政治家です」
「ほう、それは良くできた人物じゃないか」
「あなたは俺のやりかたを邪道だなんだと認めないが、決まり従っているのは事実だ。ルールを破らず
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