生存戦 2
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・フライ】を使おうにも、機動力を維持しながら長時間飛ぶために必要な専用の魔導器の持ち合わせもない。
詰みだ。
少なくとも秋芳の対戦相手はそう思った。
勝つための思考を放棄した。
というより思わぬ事態に混乱し、それどころではない。
秋芳の言った「心も体も、実戦では思うように動かないものだ」というやつだ。
今回の決闘に、制限時間も場外もない。遥か空高く、秋芳の目の届く外まで、安全圏までいったら【ゲイル・ブロウ】の噴射で移動し、あらためてゆっくりと落下して仕切り直すという方法もあったが、それをしなかった。
みずから敗けを認めた。
「三界の理・天秤の法則・律の皿は右舷に傾くべし」
次の対戦相手もまた急接近した秋芳に【グラビティ・コントロール】をかけられた。今度は先程とは逆に重力の枷をいくつもはめられた。
たちまち意識を失った。
急激な加重によって血液が下半身に集まり、脳に十分な酸素供給ができなくなることによる貧血で失神したのだ。
人は本来の体重の五〜六倍になると脳の血が下がって失神するという。F1レーサーや戦闘機のパイロットがGの加速度によっておちいるブラックアウトというやつだ。
【グラビティ・コントロール】は単に体重を増減させるだけではない、このような使いかたもあるのだ。
非殺傷系どころか攻性呪文ですらない【グラビティ・コントロール】で立て続けに勝ちをおさめた秋芳の戦いかたは学院で正攻法のみの魔術戦を習った者には極めて異様に見えた。
はじめて目にする奇術や曲芸を見たときのような、狐につままれたように呆気にとらわれた。
だが秋芳は伊達や酔狂でこのような戦いをしたわけではない。魔術の汎用性を、使いかたしだいでどのような魔術も武器になりえるということを言葉ではなく行動で示す目的があったのだ。
聡明な者ならそのことを察したが、そうでない、魔術戦とはこうあるべし。という固定観念に縛られた者の目には冒涜に思えた。
「おのれ東方人、神聖な魔術決闘を愚弄するとは……!」
ストリックランドもそのひとりだった。
さっそく秋芳にくってかかる。
「ふざけるのも大概にしろ、なんなんだその魔術の使いかたは。真面目に戦うつもりがないのなら決闘なぞするな」
「ふざけているわけでも不真面目なつもりもありませんが」
「そんな奇をてらう真似をして、どの口がほざく。攻性呪文を使ってまともに戦え。炎熱・冷気・電撃の基本三属に風。これらをもちいて力と技を競うことこそ魔術決闘の神髄だ」
「凡戦者、以正合、以奇勝」
「なんだと!?」
「戦いは正を以て合い、奇を以て勝つ。一対一で対峙して正面からぶつかり合う正攻法は基本ですが、それでは純粋に実力の差、時の運が勝敗を決することになります。勝利を確実にするために
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