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SAO─戦士達の物語
MR編
百五十四話 成長
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「……もうすぐ、3年も経つんだね……」
「……あぁ、そうか……もう、そんなになるんだな……」
それはきっと、時間と、その時間の中に降り積もっていく、彼を今取り巻く人々の記憶だけだろう。

「短かった?」
「どうだろう……長いような、短いような……不思議な感じだよ。色々あって……色々、変わったもんな……」
その月日を思い出すように、遠い目をして、キリトが小さく吹き出すように笑みをこぼす。ようやく浮かんだ彼の笑顔に少しだけ安心する。同時に、記憶であってすら、簡単にキリトを笑顔にしてしまうアスナ達の存在を、心からありがたく、そして温かく感じた。
それらに背を押されたせいなのか、サチはふと、ずっと以前から言いたくて、けれど決して言う事が出来なかったわがままを口に出す。

「……ねぇ、キリト……聞いてほしいことがあるの……」
「うん……?どうした?」
立ち止まったサチに、キリトは振り返ってサチの目を見る。彼女は一瞬だけ躊躇う様に目を伏せたが、すぐに顔を上げて、真っすぐに彼を見て言った。

「もし、良かったら……今度、一緒にお墓参りに行かない?」
「え……?」
思ってもいなかったのだろう、目を丸くしたキリトが、呆けたような顔で制止する。一方のサチはと言えば、決定的な一言を口にしたせいか、堰を切ったように続く言葉を紡いだ。

「みんなのお墓の場所、私知ってるの……一度二人でみんなのお墓に行って、元気だよって言ってあげたいなって……今まで、キリトには、辛いかなって思って、言えなくて……でも、ずっとキリトも一緒に来てほしくて……付きあって、くれないかな?」
「サチ……」
よほどの勇気を出して言ってくれたのだろう。サチの顔は少し頬が紅潮し目は熱っぽく潤んでいる、何時になく興奮した様子で自分を見つめる彼女の視線を、しかし受け止め斬る事が出来ずに、咄嗟にキリトは顔を逸らした。

「でも、俺は……俺がみんなの墓前に合わせる顔なんて……」
「元気な顔だけで十分だよ。さっきキリト言ってたよね?色々変わったって……その事、みんなにも伝えてあげよう?」
「けど……」
言葉に詰まりながらも、「行きたい」と、そう思っている自分が確かに居る事を、キリトは自覚する。かつて共に在り、自分の所為で死んでしまった彼らの墓前に、詫びたい気持ち、そして許されるなら、今も生きる自分が彼らとの出会いで得た物、彼らと出会えたからこそ、巡り巡って今の自分に在る物を、沢山の大切なものを、伝えたい。そう心から想う。
だが同時に、同じくらい、そんなことは許されないのではないかという気持ちも在るのだ。自分の弱さや甘さ、浅はかさが彼らを殺した。そんな自分が今更彼らの墓前に立って、彼らの眠りを妨げるようなことがあっていいのか、そんな事が許されるはずがないと、どうしてもそう考え
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