MR編
百五十四話 成長
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体、乾ききった動作音、がらんどうの瞳、凶暴な光を放つ鈍い銀色の切っ先に、何時かを思い出す。以前にもこんな事があって、あの時、自分は何もできずに殺されるはずだった。瞬くように脳裏をよぎったその恐ろしい記憶に一瞬、心が折れそうになる……だが……
「──!」
その恐怖をはねのけて……否、その恐怖を遠ざけるためにこそ、サチは唯一動く口を動かす。紡ぐのは超短文詠唱。瞬間的に一定以下のステータスの敵を数メートル吹き飛ばすというだけの単純な効果だが、成功すればこの状況を好転……そうで無くても、ほんの一瞬だけ、時間を稼ぐことは出来る。その時間を、彼女はスタッフに飛びついてそれを回収する事に使った。使った詠唱は結局、スケルトンを吹き飛ばすのではなく一瞬硬直させるだけにとどまったが、それでも武器の回収は出来た。
彼女が床の上で転がるように振り向くとの、追撃に来たスケルトンの持つ剣が振り下ろされるのは、殆ど同時だった。
「ッ……!く……ぅ……!」
「……!」
ALOにおける鍔迫り合いの結果は、筋力値をはじめとする各種パラメーターによって決定される、結果、今回はサチが掲げたスタッフは、徐々に彼女の方へと押し込まれ始めた。
カタカタカタカタと不快な音を立てながら、仰向けになったサチに向けて振りかざされた刃がゆっくりとその喉元に迫る。受け止めながらもなんとか詠唱を紡ごうとしたが、詠唱のために少しでも息を吐こうものなら押し込まれる速さが増すような気がして、それどころではない。
「ぅ……ぁッ……!」
そうして遂に、彼女の首筋に刃が触れる。真紅のダメージエフェクトが散るのと同時に、視界の端に表示されたHPが減少を始め、そんなことはあり得ないと知っているはずなのに、明確な死の予感が彼女の胸中を貫いた。
「(もう、ダメ……!)」
死になる恐怖から、せめてリメントライトになるまでの間逃れようと目を瞑りかけた……その時だった。
「サチッ!!」
「ッ!?」
少年の声と共に、自分を組み伏せていた白骨が吹き飛ばされる。代わりに彼女の視界に移ったのは、夜空を移したような漆黒の背中だ。見慣れたその背中に、思わずつぶやいていた。
「キリ、ト……」
「大丈夫か!?」
「う、うん……!」
何とか息を落ち着けるまでの間に、目の前に居たはずのスケルトンはあっという間にポリゴンへと姿を変えていた。
振り向いた少年は、へたり込むサチの様子を見て心底安堵したように息を吐く。
「無事で良かった……本当に……」
「う、うん。助けてくれて、ありがとう……」
見上げるサチに、キリトは少しだけ躊躇ったような表情を見せた後に少しぎこちなく微笑んで手を差し出した。
───
「…………」
「…………」
数分ほどの間、2人は無言のまま石材
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