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SAO─戦士達の物語
MR編
百五十四話 成長
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を取る事が出来たとみて、彼女は振り返ると、システムに認証されるギリギリのスピードで、必死の詠唱を開始する。

「……ッ」
近づく足音に対する恐怖を必死に跳ねのけながら、可能な限り冷静に、可能な限り早く、一言一言詠唱を紡ぐ。一人でいる心細さ、周囲の石材で出来た壁と床、松明から発される赤みを帯びた光と反響する足音の圧迫感に、どうしても記憶の彼方にうずめたはずの在りし日の恐怖が脳内にリフレインして足が頽れそうになるが、今自分が紡いでいる言の葉を一筋の希望にして、何とかそこに足を踏みしめる。

「──」
詠唱を続ける、後5ワード……

「──」
敵が見えた、後3ワード……

「──ッ!」
後数メートルで剣の切っ先が自分に届く、後1ワード……!

「ッ!!」
紡がれた文字が集束し、敵の眼前で業火の塊になる。次の瞬間、極熱を含んだ橙色の光と熱が、迫りくる白骨を黒炭へと還した。

「……ッ、ハァ……」
吐きそうなほどの緊張感を、何とかため息に変えて吐き出し、全身に入っていた力を抜く。先ほどのトラップによって、完全に孤立したと理解したときは心細さと不安で胸がつぶれそうになったが、何とか気持ちを立て直して歩き出した矢先、あのエネミー群と接敵してしまった時には、流石に悲鳴を上げそうになってしまった……だが、ひとまずは乗り切った。とにかく、可能な限り注意して、なるべく接敵しない、するにしても不意打ちで一撃目を狙えるように動いて、合流をめざすしかない。
そんな事を、考えていた所為なのか……近接の経験が今となっては極端に少なくなっていた彼女は、魔法のエフェクトで確認しきれない、通路の奥の敵が完全に殲滅できているか、その十分な警戒を怠った。だから。エフェクトとして残った業火の光の奥から飛び出したスケルトンに対する反応が致命的に送れを取る。

「!!!」
「え、ぅぁっ!?」
振りかざされた剣を手に持った(スタッフ)で何とか受け止める。が、魔法使い(メイジ)であるゆえに筋力値の低い彼女の脚は踏ん張りが聞かず、たたらをふんで後退し、何とか目を開いて対処に移ろうとしたところに……

「っ…………!」
間髪入れずに放たれたシールドバッシュをモロに食らって突き抜ける衝撃と浮遊感……直後、叩きつけられた背中から跳ね返る逆方向の衝撃で、息が詰まった。

「…………!」
何とか床に手をついて立ち上がろうにも、転倒(タンブル)状態が適用されてしまったらしく、体に残った衝撃の所為でうまく起き上がることが出来ない。しかしそうしている間にも、乾いた骨の足音は容赦なく彼女に接近してくるのが分かる。

「っ……!」
意志の力を何とか振り絞って顔を上げる。が、その視線の先には、既にトドメを刺そうと剣を振り上げたスケルトンが写っていた。
くすんだ白の身
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