MR編
百五十四話 成長
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「おっ……琉ァッ!」
戦闘開始から数分。最後のスケルトンが、蹴り飛ばされて粉々に吹き飛び、ポリゴン片となって四散する。残心を取るように周囲を一度警戒しなおして一体の安全を確認すると、斬馬刀を担ぎなおして振り向いた。
「ったく……シリカ、無事か」
「は、はい……でも、これ……」
表示したウィンドウとにらめっこしながら、泣きそうにも見える表情でリョウを見る彼女の表情から、彼は何となくの事情を察した。
「ま、そりゃダンジョン内ではぐれた奴と連絡なんぞ取れんわな……綺麗に分断されたわけだ。とりあえず、移動するぞ」
歩き出した二人の周囲に、カツーン、カツーンと硬質な音が響く。石で囲まれた薄暗い空間は、死霊の所為なのか、あるいは分断されたショックの所為でそう感じるだけなのか、陰鬱な空気を醸し出し、二人の間にも重い沈黙が流れる
「うぅ……」
「……ま、そうしょげた顔すんな。こりゃお前さんの所為じゃなく、単純な仕様だ」
「仕様、ですか?でも、私が別れて移動するのを提案したから、トラップにかかって……」
「いや……キリトが言ってたろ、奥が行き止まりになってたってよ」
「は、はい」
キリトの最後の報告は、確かに通路の奥が行き止まりになっているという話だった。と、そこまで想いだして、シリカもそうかと思い当たる。
「奥が行き止まりで、トラップに掛かった後は通路が続いてる……」
「あぁ、このダンジョンは多分、元々あのトラップを使ってメンバーを分断、シャッフルすることが前提になってんだろうよ。それが高難易度の一つの理由だ。逆に言やぁ、あれに掛かるのは当たり前。リーダーがアスナだろうがキリトだろうが変わらん。それに、あの状況ならオレもあいつ等も、シリカと同じ判断をしたと思うね」
だからお前の所為ってのは筋違いだ。そう言って話を切ったリョウに、シリカは表情を和らげて、微笑みながら嬉しそうに答える。
「……ありがとうございます、励まして貰って……」
「励ました、ッつーより、単なる事実だがな……あとはまぁ、同行者がしょげた顔してっと、空気が重くてオレが怠い、ってのもある」
「もぅ……リョウさんは、素直じゃないです」
中々自分の感謝をストレートに受け取ってくれようとしないリョウに、口を尖らせたシリカは少しばかり不満げな顔をしたがしかし、そんな彼女を気にしたようなそぶりも無く、軽く鼻で笑って彼は続ける。
「素直さってのは、歳を喰ううちにだんだん失われてくもんなんだよ。お前みたく、食い物を貰うとピヨピヨついてく素直さが、今となっては羨ましいぜ」
「むっ!私、そんなに安っぽくないです!それにピヨピヨってなんですかぁ!」
子供扱いされているからなのか、ひよこ扱いされているからなのか、なんにせよ少しばかり不服そうに、シリカは頬を膨らませる
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