133部分:ヴァルハラの玉座その十四
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ヴァルハラの玉座その十四
「降伏したことを恥じてか、敗戦の責任を取ってのことか?」
「いえ、それがどうも違うようなのです」
「違う!?」
「はい。何でも突発的に自決したようでして」
「突発的にか」
「誰にも告げることなく。その場で急に」
「衝動的なものなのか」
「そう思われます。ヒステリーか何かでしょうか」
「それも考えられるがその様な者が艦隊の司令官に任命されるだろうか」
ジークフリートはそこに疑問を持った。
「普通はないと思うが」
「確かに」
「おそらくそれはないな」
彼はそのうえで述べた。
「では一体何故」
「私にもそこまではわからないが。若しかするとだ」
「はい」
「帝国軍にはそれをさせる何かがあるのかもな」
「軍律でしょうか」
帝国軍の軍律は非常に厳格なことで知られている。これは徹底した法治主義を掲げるクリングゾルの政策を反映してのことだが軍におけるそれはさらに徹底し、厳格なものであった。命令違反や脱走に対しては死を以って償わさせられる。実は帝国軍は略奪や暴行が極端に少ないのだがそれはここにも現われている。ただし帝国に逆らう者に対しては容赦ない攻撃が加えられる。
「投降は死、か」
「若しかすると」
「だとすると帝国軍は徹底しているな。まるで人の軍ではない」
「人にあらざる者達、ですか」
「少なくとも今まであった第四帝国のそれとは全く違うものだ」
ジークフリートは言った。
「そうした意味で。彼等は通常の者達ではない」
「とりわけその中枢にいるニーベルングは」
「彼に関してはあまりにも謎が多いしな」
このことはジークフリートも知っていた。クリングゾル=フォン=ニーベルングはその正確な経歴も出自も何もかもが謎に包まれているのだ。第四帝国で宇宙軍総司令官、元帥にまであった男ではあるがその全てが謎なのだ。公式の記録は全て改竄されたものであるとされている。
「何者かさえわかってはいない」
彼もまたそれに言及した。
「そこに今の帝国を解く鍵があるのだろうが」
「全ては今だ闇の中ですね」
「そうだな。そう言う他ない」
「それがわからにと対策が立てられないところがありますね」
「そもそも本拠地すらはっきりしていない」
そこが最大の悩みであった。帝国はその本拠地が何処にあるのかはっきりしていないのだ。
「何処にあるのかさえ」
「思えば不思議な話ですが」
「クリングゾル=フォン=ニーベルング」
ジークフリートはその名を呟いた。
「思えば不吉な響きのする名だ」
「そうでしょうか」
「またこちらに兵を向けてくるだろう。だがその前に」
「はい」
これに関しては何を為すべきかここにいる者は全てわかっていた。
「まずは勢力を蓄える。そして」
「ラインゴールド
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