第九章 伝説のはじまり
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。著作権を譲り渡すということは、自分たちに制作・発表の権利がなくなる、自分たちの所有物ではなくなる、ということなのだから。
せっかく続編構想を練っていたというのに。
定夫は最初から譲渡賛成派であったが、葛藤もあった。
だが彼は、こう考えた。
「コノアニメヲミロ!」で、ネット配信アニメながらもその他一般のアニメを抜かしてランキング一位を獲得してしまった時から、テレビアニメ化は夢ではなく現実に起こるのではないか、と考えていたはずだよな、と。
そうであればこそ、まずは地に足をつけて一本ずつ前進しようということで、続編計画に乗り気であったのだから。
つまりは、花開くのが予想していたよりも早くなっただけなのだ。
作品が産みの親である自分たちの手を離れるのは寂しくもあったが、「魔法女子ほのか」をよりたくさんの人々に知ってもらえる喜びが勝り、反対派の八王子を説得、中立派の二人を含む四人全員が、最終的には賛成の方向で一致し、かような地にてかような運びと相成ったわけである。
さて、
キャラクターや舞台背景などの設定書、前後のストーリー展開、などはもう向かい合っている星プロの増田さんに差し出してあり、後は判子を押すばかり。
定夫はいよいよ決心したか、南無と小さく呟くと、判子を持った右腕をぶいんと高く勢いよく振り上げた。
その際にガスッと敦子の頬に思い切りパンチをくれてしまったが、定夫も敦子も凄まじいまでの緊張のためか全然気付いていなかった。
「ままよっ!」
人生で一回いってみたかった、ままよの叫びの勢いと裏腹に、定夫の手はそおーーっと静かに降りていき、
そして、
ついに、
契約書に、判子が押されたのであった。
それは、「魔法女子ほのか」のテレビアニメ化がほぼ決定した瞬間でもあった。
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なお彼は高校生つまり未成年であるため、あらかじめ自宅で保護者の判子も押してある。そんな得体の知れぬ物に誰が押すか、と父親が渋りに渋って、説得には相当な苦労を要したのだが。
とにかくそんなこんなも苦労は昔、これにて契約は締結。
作品に関する権利の譲渡は確約された。
なお、定夫たちへ支払われる契約金は五十万円。
「妥当なのか、少ないのか」
契約処理をすべて終えて、星プロのビルを後にしながら、八王子が呟いた疑問である。
「多くはない、と思う。でも、ふっかけるってことをしたくなかったんだよなあ」
と、定夫は遠い視線で、故郷武蔵野よりほんのちょっぴり微妙に汚れているであろう青空を見上げた。
かっこつけでいったのではなく、本心だ。
でないと、「ほのか」という作品、その存在が汚れてしまう気がして。
自分たちの
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