第九章 伝説のはじまり
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に説明すると、
魔法女子ほのかを、テレビアニメ化したい。
どむっ!
涙目で狂乱したように慌てふためく敦子に急かされるようにメールを目にした瞬間の、定夫の、心臓の音であった。
とてつもなく分厚い脂肪の奥なので、聞こえるはずもないかも知れないが、でも確かに定夫は、自身の胸のたかなりを聞いたのである。
どむっ!
どむっ!
続いて、トゲリンと八王子の、心臓が爆発した。
他人の心音がこうして聞こえてしまうくらいだから、自分の音が聞こえるくらいは当然というものであろう。
心臓の音などかわいい方で、トゲリンなどギョンと槍のように鋭く飛び出した目玉が眼鏡のレンズを突き破っていた。咄嗟に避けなければ、定夫の脳天はほぼ間違いなく槍に貫かれて即死していただろう。
現実に心が戻るまでに、どれだけの時間を要したであろうか。
定夫は、そおっと手を伸ばし、トゲリンの腕をぎゅうっと思い切りつねってみた。
「痛い!」
ネチョネチョした悲鳴が上がる。
夢じゃない。
ごくり、と定夫は唾を飲み込んだ。
ネットでの高評判を受けて、テレビアニメ化という野望は夢として抱いてはいたが、そう簡単にかなうようなものではないことも理解していた。
続編を作るにしても、あくまで同人誌のような、分かる人に分かってもらえばよい、というそんなレベルの代物であろうと心の奥では思っていた。
それが……
こんなにあっさりと、他から展開の話が来て、
しかも、それがいきなりテレビアニメとは。
ネットでもOVAでもない、王道の中の王道であるテレビアニメ。
夢としか思えないが、だが現実なのだ。
このメールを信じるのであれば、という前提付きではあるがこれは現実なのだ。
嗚呼、
テレビアニメ化。
どこだろう。東京TXかな、やっぱり。深夜枠かな、やっぱり。贅沢はいっていられないが。
意外と人気が出て、一期、二期、三期、とシリーズ化したりして。
OVA化、したりして。
劇場アニメに、
ゲーム化、
スピンオフ、
漫画、
落語、
意表ついて紙芝居、人形劇、
カード入りほのかスナック、
トレーディングカード、
山手線で、車体広告、
小説、
フィギュア発売、
制作者インタビュー、
海外で放映、
つまり、
世界征服!
伝説の、始まり……
そんな言葉を胸に唱えながら、
定夫は、
ぎゅっと、脂っぽい拳を握りしめたのである。
5
「おお、押す、押すでござるよっ」
震える定夫の声。トゲリンのようなサムライ言葉になっているのは、いかなる理由か。
同じ長
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