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真田十勇士
巻ノ百三十四 寒い春その十二
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 大野はそれを見てだ、己を介抱する平山に言った。
「わしは大事ない、それよりもじゃ」
「刺客をですか」
「何とかせよ」
 こう命じた。
「よいな」
「では」
「うむ、そうせよ」
 こう言って平山を行かせた、するとだった。
 平山は主の命に素直に従ってだった、すぐに刺客を追ってだった。
 逃げ道を塞ぎそのうえで切った、こうして何とか大野は難を逃れたが。
 彼はことが収まってからだ、その刺客の骸の傍に来て家臣達に言った。
「この者、夜なので顔は見えぬが」
「それでもですな」
「道に晒しておき」
「知っている者が出るのを待ちますか」
「そうしますか」
「うむ、そうせよ」
 家臣達に命じた、すると家臣達もだった。
 その刺客の骸を城の中の道に晒した、するとその日のうちにその刺客を見て豊臣家のある侍がこう言った。
「これは成田殿の家臣ではないか」
「何っ、成田殿というと」
「大野主馬殿の家臣ではないか」
「その御仁の家の者か」
「と、なると」
 疑いの目が治房に向かった、それを受けてだった。
 傷の手当てを受けたばかりの大野は米村を呼びすぐに言った。
「お主の三男に頼みたい」
「はい、兵を率いてですな」
「成田の屋敷に向かいそしてじゃ」
「成田殿を捕まえそうして」
「この度の話を聞こう」
 傷は受けていたが確かな命だった、米村もそれを受けてすぐに彼の三男に五十の兵を与えて成田の屋敷に向かわせた。
 だが成田は兵達に己の屋敷を囲まれると屋敷に火をつけて自らはその中で腹を切ってしまった。これではだった。
「参ったのう、これではな」
「はい、何もですな」
「わからぬわ」
 大野は米村に苦い顔で答えた。
「その成田が死んではな」
「死人に口なしですな」
「全くじゃ、おそらくな」
 己の読みを話した大野だった。
「成田が主馬に言われてじゃ」
「そうしてですな」
「己の家臣で腕の立つ者にじゃ」
「殿を殺す様に命じられましたか」
「黒幕は主馬じゃ」
 このことは間違いないというのだ。
「他に考えられぬわ」
「そうでしょうな、やはり」
「うむ、しかしな」
「それでもですな」
「死人に口なしじゃ」
 自分でもこの言葉を出した大野だった。
「だからじゃ」
「わかりませぬな」
「最早な、しかしこれでな」
「殿はですな」
「あと一歩であったが」
 講和の話を忌々し気に言った。
「暫く政を執れず茶々様にお話をするのもな」
「出来ませぬな」
「わし以外にも講和を言う者はおるが」
「その方々も」
「うむ、こうして命を狙われると思えば」
 講和を言う者の筆頭である大野が襲われたのを見てだ。
「怯えるわ」
「そうなりますな」
「しかも茶々様に直接お話することもな」

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