巻ノ百三十四 寒い春その十一
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「約を果たします」
「ではその時は」
「必ずや」
こう大野に話してだ、幸村はすぐに肥後の加藤家に密かに文を送りそうして木下家にもそうした。そして島津家にも。
そうしてことを進めていた、大野はその間に秀頼と茶々の為に幕府と彼等が大坂を出て他の国に入る話を進めていた。
それで連日夜遅くまで城内の己の御用部屋で政の働きをしていた、それはこの日もだった。
夜分遅くになってだ、米村が大野に言った。見れば若く端正な顔をしている。
「殿、もうです」
「むっ、もうか」
「はい、間もなく子の刻です」
「そうか、ではな」
「お屋敷に戻られるべきかと」
「ここで休んでもよいが」
この部屋で寝て、とだ。大野は米村に話した。岡山と平山もいる。二人は非常に逞しく強そうな顔をしている。
「しかしな」
「それはです」
「己の屋敷でしかと身体を休めてこそじゃな」
「これからも満足に働けます」
米村は大野にこう話した。
「ですから」
「そうか、それではな」
「はい、お屋敷に帰りましょう」
「わかった」
大野は米村、己が取り立てた彼の自身を気遣う言葉に頷いてだった。
部屋を片付けてそうして彼等に護られつつ己の屋敷に向かった。大野は特別に城の中でも駕籠に乗ることを許されていたが。
「今宵もですな」
「馬に乗られますな」
「そうされますな」
「これならすぐに避けられる」
例え刺客が来てもというのだ。
「それでじゃ」
「馬に乗られ」
「そのうえで、ですな」
「我等が護りますな」
「そうしてくれて何よりじゃ」
家臣達への労わりの言葉も忘れない彼だった。
「ではな」
「はい、これより」
「屋敷に戻ってです」
「明日また励みましょう」
「このままいけばじゃ」
己の働きに手応えを感じて言う大野だった。
「ことはなるぞ」
「右大臣様にですな」
「無事に他の国に移って頂き」
「茶々様もですな」
「何とか」
「苦心して説得しておる」
大野も今回ばかりは必死になってだ。
「そうしておる、だからな」
「ここはですな」
「あと一歩なので」
「ことを確かにしますな」
「そうしていくぞ」
己の家臣達にも言う、そうしてだった。
大野は己の屋敷に戻っていた、だがその途中だ。
夜の闇に乗じて何者かが大野に迫った、すぐに米村が大野を護ろうとしたがその刀を抜いた彼の横をすり抜けて。
大野に切りつけた、だが大野は咄嗟に身体をかわしてだった。
左肩は切られたが急所は切られなかった、そのうえで彼も刀を抜いて叫んだ、
「何奴!」
「殿、ご無事ですか!」
「お怪我はありませぬか!」
「大したことはない、それよりもだ」
駆け付けてきた平山に支えられつつだ、大野は家臣達に言った。
「
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