125部分:ヴァルハラの玉座その六
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ヴァルハラの玉座その六
「攻撃目標は帝国軍とする。よいな」
彼等も動いた。そして一気に攻め込む。
ジークフリートの戦術は機動戦であった。素早く接近し、そのうえで圧倒的な火力をぶつけるといったものだった。
「まずは敵軍に穴を開けさせろ!」
ノートゥングの艦橋において言う。
「そしてそこから突入する!よいな!」
「ハッ!」
部下達はその指示に従い動く。そしてタンホイザーの軍に向かっていた帝国軍はその陣形を乱した。
タンホイザーはそれを好機ととったのだろうか。民間船達を守りながら徐々に後退していく。
「オフターディンゲン公爵の軍が徐々に退いていきます」
「うむ」
ジークフリートはその報告に頷いた。
「殆どの民間船も無事保護されたようです。ただ」
「ただ。何だ?」
「一隻。逃げ遅れたものがあるようです」
「一隻がか」
それを聞いたジークフリートの顔がピクリと動いた。
「そしてその民間船はどうなったが」
「残念ながら消息不明です」
「そうか」
「そして先程の戦いで帝国軍もかなりのダメージを受けました。戦場を離脱していきます」
「そうか。では我々も今ここにいる理由はなくなったな」
「はい」
「これでいい。全軍シュヴァルツバルトまで退く」
彼は撤収を決定した。
「帰られるのですね」
「そうだ。もうここに用はないからな」
「チューリンゲンは占領されないのですね」
「あれは私のものではない」
彼は部下の言葉にすっと笑って答えた。
「チューリンゲン王家のものだ。ならば手を出してはまずい」
「左様ですか」
「チューリンゲンはいずれ王家、そして公爵の手に返る」
目の前の青と緑の美しい惑星を眺めながら言った。
「だからこそいいな。手出しはするな」
「はい」
「わかりました。それでは」
彼等は帝国軍と戦うだけに留めた。帝国軍はタンホイザーの軍勢が戦場を離脱するのを見届けると彼等も戦場を去った。だがジークフリートはここのあることに気付いた。
「やはり妙だな」
彼は帝国軍の動きを見て言った。
「何がでしょうか」
「あの陣は。妙だと思わないか」
モニターに映る帝国軍の陣を見て部下達に言った。見ればそれは円陣であった。
「まるで何かを護衛しているようだ」
「何かを」
「そうだ。戦場で何かを得たのか?」
「オフターディンゲン公爵の軍からの戦利品でしょうか」
「若しくは彼等にとって極めて重要なものだな」
「重要なもの」
「それは一体」
「細かいことはわかりようもないが」
だが彼は何かを感じていた。
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