122部分:ヴァルハラの玉座その三
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ヴァルハラの玉座その三
「帝国と敵対する勢力に。武器を提供しているそうだな」
「左様です。では私がここに来られた理由はおわかりですね」
「ああ」
その言葉に頷いた。
「それでは話が早いです。では早速」
「何を提供してくれるのだ?」
「多くの艦艇と新型艦を一隻」
「新型艦だと」
「そうです。あれを御覧下さい」
空を指差す。そこに一隻の艦があった。
「あれは」
「あれこそが貴方に御贈りする新型艦です」
パルジファルは言った。
「ザックス級戦艦の六番艦です」
「ザックス」
「そう、それがあの艦です」
見ればかなり大きい。そして武装も豊富であった。
それでいて実に美しい姿であった。流れるようであり、同時に雄々しくもある。ジークフリートはその姿を見て一目で心を奪われるのを感じていた。
「如何でしょうか」
「あの艦を私に与えてくれるのか」
「はい」
パルジファルは頷いた。
「是非共。お使い下さい」
「報酬は」
「報酬とは」
「これだけの艦を与えてくれるからには。見返りもあるのだろう。違うか」
「その通りです」
そしてパルジファルはそれを否定しなかった。
「ジークフリート=ヴァンフリート首領」
彼はあらためてジークフリートの名を呼んだ。
「貴方はこれから帝国と戦われる運命にあります」
「運命か」
その言葉に反応してパルジファルに目をやった。
「卿は宗教家でもあるのか?いきなり運命を持ち出すとは」
「いえ、違います」
しかしそれは否定した。
「私は。見ただけです」
「見た!?運命をか」
「はい」
ジークフリートはその返事を少しシニカルに聞いた。まさかそれを肯定するとは思わなかった。ぼかすか誤魔化すだろうと思っていた。だがパルジファルは今それを肯定してきた。山師でもあるのかと思ったのだ。
「面白いことを言うな」
そして口でもそれを出してきた。
「何処で運命を見たのか。聞かせてもらいたいものだ」
「記憶からです」
「記憶だと!?」
今度はシニカルには考えられなかった。真面目な心で反応を示した。
「それはどういうことだ」
パルジファルを見やりながら問う。
「卿の記憶が。運命を見せているというのか」
「見せているのは運命だけではありません」
彼はそれに答えて言った。
「宇宙の創造から太古の記憶まで。全てのものを見せています」
「わからん。一体どういうことなのだ」
ジークフリートはそれを聞いて困惑を隠せなかった。
「卿の記憶は。これまで起こったことのあらゆるものを見せているというのか」
「そして未来も同時に」
「未来も」
「ヴァンフリート殿、貴方も御覧になられている筈です」
(まさか)
その言葉に思うものがあった。
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