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正統派パラドル
第一章
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               正統派パラドル
 八条芸能の副社長である八条義二は面接に来た高校を卒業したばかりの女性の履歴書を読みつつ社員の一人である桜井美奈子に尋ねた。
「この娘は怪我一つしたことがないのか」
「はい、病気もです」
 一切とだ、美奈子は八条に答えた。八条はサングラスをかけて黒髪を粋に立たせてセットしている。サングラスをかけている顔立ちは自身もタレントになれる位に整っていてスーツもよく似合っている。そのうえでやや切れ長の目を持ちいささかきつい感じだが整った顔立ちで黒髪を後ろで束ねている美奈子に言っていた。美奈子もスタイルはよくズボンもスーツも実によく似合っている感じである。
「生まれてから一切です」
「したことがないのか」
「はい、本人が言うには丈夫で」
「どんなことがあってもか」
「車に撥ねられても間違えて腐ったものを食べてもです」
 何があってもというのだ。
「何もなかったとか」
「そして体力もか」
「子供の頃から色々と身体を動かしていて学生時代はトライアスロンをしていたとか」
「トライアスロンか」
「それで体力も相当な自信があるとか」
「そうか、顔も悪くないな」
 履歴書には黒いロングヘアに楚々とした顔立ちの少女の写真がある、背は一五五で体重は四十五、スリーサイズは上から八二、五八、八四とある。
「スタイルもそこそこだしな」
「では」
「採用だ、社長にも言おう」
 八条はこう美奈子に答えた。
「そうしよう」
「ではアイドルですか?女優ですか?」
 どちらの路線で売り出すのかを尋ねた美奈子だった。
「この娘は」
「この娘は逸材だ」
 まさにと答えた八条だった。
「普通にアイドルや女優で売り出す娘じゃない」
「といいますと」
「この娘の売り出し方は決まった」
 八条はここでニヤリと笑った。
「こうした娘は必要だ、頑張ってもらおう」
「本人は頑張ってどんどん稼ぎたいとも言ってました」
「いい心意気だ、ではな」
「副社長のお考えで、ですね」
「この娘には働いてもらおう」
 採用の判子を押してだ、八条はこの鷲尾光の採用を決めた。かくして光は八条氏無所のタレントとなり美奈子がマネージャーとなったが。
 入社の挨拶が終わるとすぐにだ、八条は光に笑って言った。
「早速仕事だぞ」
「えっ、私今入社の挨拶したばかりですけれど」
「喜べ、入社してすぐにだ」
「お仕事があるんですか」
「いいことだな、では君はだ」
「はい、どんなお仕事でしょうか」
 光は八条に目を輝かせて尋ねた、実際に頑張って稼ぐというやる気に満ちていた。
 だが光は歌やドラマの仕事と思っていた、その彼女に八条が言った仕事はというと。
「すぐに習志野に行ってくれるか」
「習志野ですか?」
「そうだ
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