119部分:イドゥンの杯その二十五
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イドゥンの杯その二十五
「御無事でしたか」
「ああ、運良く助かった」
見ればローエングリンの部下達もいた。ローエングリンも彼等に迎え入れられていた。
「ふとしたことで彼と知り合ってな」
「ブラバント司令とですか」
「そうだ。彼もまた帝国と戦う者だ。これは知っているな」
「はい」
部下達はそれに応えた。
「我等の同志」
「そう、我々は同志だ」
トリスタンはここで強い声で述べた。
「そして陛下」
部下達はまたトリスタンに問うた。見ればローエングリンの部下達も同じである。彼等はそれぞれの主に対して問うていた。
「これからどうされるのですか」
「ラインへ向かう」
トリスタンとローエングリンは同時に言った。
「ラインへ」
「そうだ、そして」
「クリングゾル=フォン=ニーベルングを倒す。よいな」
「はっ」
「了解しました」
それぞれの部下達はそれぞれの主君達にそう返事を返した。
「それでは我等はこれより」
「全軍ラインへ」
それがトリスタンの言葉であった。そしてローエングリンの言葉であった。
両軍はラートボートを後にするとヴァルハラ双惑星に向かう準備に入った。クンドリーとの因縁を終わらせたトリスタンは続いてもう一つの戦いに向かうのであった。
ノルン銀河はなおも戦乱に覆われている。だがその果てに彼の運命があるということを他ならぬ彼こそが見極めていたのであった。
「クンドリー」
彼はイゾルデの艦橋で呟いた。
「また。何時か遠い輪廻の先で会おう」
最後にラートボートを見た。クンドリーの墓標でもあるその星は果てしなく青く、美しかった。まるで銀河の宝石の様に青く輝いていた。
イドゥンの杯 完
2006・5・15
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