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118部分:イドゥンの杯その二十四

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イドゥンの杯その二十四

「私はトリスタン」
「トリスタン」
「トリスタン=フォン=カレオール。これが私の名だ」
「そうか。卿のことは聞いている」
「聞いているか」
「帝国きっての天才科学者だったな」
「人はそう言ってくれるな」
「そしてカレオール藩王だ。違うか」
「その通りだ。そして卿と同じく」
「帝国と戦っている」
「そうした意味で我々は同じだ」
「そして我々を入れて七人の者がいる」
「七人」
 トリスタンはその言葉を聞いてその知的な眉を動かした。
「今七人と言ったな」
「これもあちらで聞いてきたことだ」
 ローエングリンはこう返した。
「我等を含めて七人。帝国と戦っている」
「私はそれをモンサルヴァートから言われた」
「彼からか」
「やはり卿も知っていたか」
「武器商人のな。知らぬ筈がない」
 ローエングリンは一言こう述べた。
「どうやら我等がここで会ったのは運命だったようだな」
「うむ」
「これから。どうする?」
「卿はここでずっと過ごしたいか?」
「馬鹿なことを」
 ローエングリンはその言葉を一笑に伏した。
「ここにいても何にもならないだろう」
「では決まりだな」
「そうだ、脱出する」
 その結論は二人共同じであった。
「では行くか」
「だがどうやってだ」
「何、簡単なことだ」
 ローエングリンはトリスタンに笑ってこう返した。
「これさえあれば充分だ」
 そして懐から一本のナイフを取り出した。
「ナイフだけでどうにかなるのか?」
「むしろこれさえあればどうにでもなる」
「ふむ」
「軍にいればな。ナイフがただ敵を斬るだけのものではないとわかる」
「では見せてもらおうか」
 トリスタンはローエングリンのその自信に賭けてみることにした。
「そのナイフの使い方をな」
「わかった。では見てくれ」
 ローエングリンはそれに応える形で扉の前に向かった。
「これで終わりだ」
 扉のつなぎ目を斬った。それで開いた。
「見たか?これがナイフの使い方の一つだ」
「成程な、見事なものだ」
「特殊部隊用のナイフだ。他にも使い道は色々とある」
「一本欲しくなったな」
「いいが高いぞ」
「何、価値あるものなら金に糸目はつけない」
「そうか。だがそれも」
「ここを脱出してからだ」
 二人は部屋を出た。そして囚われているローエングリンの部下達を救い出して基地を後にした。サイレンの音と共にホランダー達の追っ手がやって来たがそれは何とか振り切った。そして窮地を脱したのであった。
 ローエングリンもトリスタンもそれぞれの部下達のところへ戻った。トリスタンはすぐに部下達に迎え入れられた。

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